M&A 金融

近年、国内市場の飽和を背景に、日本企業による海外企業のM&Aが活発に行われるようになりました。金融業界においても、海外企業への出資やIT技術獲得のために異業種の企業を譲受するケースが増えています。この記事では、金融業界の現状やM&Aの業界動向、実際に金融業界で行われたM&Aの事例を紹介します。

金融業界のM&A動向現状と今後

金融業界の現状と業界動向、M&Aの動向と特徴を紹介します。

金融業界の現状と業界動向

金融業界にはさまざまな種類があり、主に銀行、証券、損害保険、ローン・消費者金融、クレジットカード、リース、その他に分類されます。

業界動向リサーチによると、2015年〜2016年の金融業界全体の主要対象企業197社の経常収益の合計額は60兆5,125億円となっています。金融業界内の内訳を見ると、銀行が24兆9,412億円と大部分を占めています。

消費者金融とリース分野が増加傾向にある一方で、損害保険、クレジットカード分野ではやや増加し、銀行、証券分野では減少となっています。

近年の金融業界の動向としては、フィンテック(Financial Technology)という金融と情報技術(IT)を掛け合わせることにより、最新のサービスとテクノロジーを利用者に提供しようという動きが活発化しています。例えば、インターネットやスマートフォン、AI(人工知能)、ビッグデータ、ブロックチェーン*1などの新しい技術を活用したサービスなどが挙げられます。

*1 ブロックチェーン:インターネットで共有される、記録の改ざん不可能な分散型のデータベース

金融業界のM&Aの動向・特徴

金融業界ではM&Aによる業界再編が進んでいます。特に銀行業界では盛んにM&Aが行われています。その背景としては、1990年代後半から2001年にかけて行われた金融ビッグバンによる大規模な規制緩和が挙げられます。これにより、金融機関の業界の垣根がなくなり、銀行同士の合併やグループの再編、異業種の参入などが行われました。

また、2016年から行われたマイナス金利政策による銀行の収益性の低下の影響などにより、財務基盤の強化を目的としてM&Aを活用するケースもあります。

加えて、フィンテックの技術を獲得するために、M&Aによって専門技術を保有している企業を譲受けるケースも今後は増えていくでしょう。

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日本全体のM&Aの動向。日本企業による海外企業のM&Aが増加

M&A 動向

2018年版 中小企業白書によると、2018年の日本のM&A件数は3,850件、金額は29兆8,802億円と、過去最高の件数と金額を記録しました。これは、前年の3,050件、13兆4,000億円を大幅に上回り、過去最高を記録した2012年以来、7年連続の増加となりました。

マーケット別に見ると、IN-IN(国内企業同士のM&A)が2,814件、IN-OUT(日本企業による海外企業のM&A)が777件で、前年と比較してそれぞれ29.1%、15.6%の増加となりました。金額に関しても、IN-INは2兆8,165億円で前年の2兆1,994億兆円と比較してやや増加し、IN-OUTに関しては、19兆366億円で前年の7兆4,802億円と比較して約2.5倍の増加となりました。

近年、日本企業による海外企業のM&Aの件数は増加傾向にあります。その背景としては、激しいグローバル競争の中で、日本企業がスピード感を持って成長するための手段としてM&Aが活用されていることなどが挙げられます。

▷関連記事:国内M&Aの市場規模と現状。2018年のM&Aは過去最多の3,850件

M&Aの増加に伴い銀行貸出残高が増加

上述した通り、日本企業による海外企業のM&Aの件数は増加しています。特に、大企業による海外企業との大規模なM&Aが増加傾向にあります。その理由としては、技術力、開発力の向上や海外エリアの拡大などを図るためです。

内閣府の発表によると、銀行貸出残高の増加傾向の理由の一つにM&Aの増加があるとしています。2018年に行われた日本企業による海外企業のM&Aを業種別に見てみると、製造業では機械や化学、非製造業では情報通信やサービスなどで増加しています。金額別に見ると、製造業では化学や機械、非製造業では情報通信やサービスなどで大企業による大型M&Aの実施があったことが影響しています。

また、業態別に見ると、都銀などの前年同月比が上昇しており、大企業によるM&Aが国内金融機関の貸出残高の増加に影響を与えたと考えられます。

今後も、大企業によるM&Aの増加が予測されており、それに伴い国内金融機関の貸出も増加することが見込まれています。

金融業界のM&A事例3選

ここでは、金融業界で行われたM&Aの事例を紹介します。

株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループによるインドネシア共和国の大手商業銀行PT Bank Danamon Indonesia,Tbk.の子会社化

三菱UFJ引用元:https://www.mufg.jp/

株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、MUFG)の子会社である三菱UFJ銀行は、2019年4月にインドネシア共和国の大手商業銀行PT Bank Danamon Indonesia,Tbk.(以下、バンクダナモン)に約3,970億円を追加出資し、子会社化しました。また、MUFGの連結子会社であるアコム株式会社が67.6%出資するPT Bank Nusantara Parahyangan, Tbk.(以下、バンクビーエヌピー)の発行済株式総数の92.1%を追加取得しました。

これにより、三菱UFJ銀行はバンクダナモンの発行済株式総数の94.0%、バンクビーエヌピーの発行済株式総数の99.9%を保有し、バンクダナモンとバンクビーエヌピーはMUFGおよび三菱UFJ銀行の連結子会社となります。また、2019年5月にバンクダナモンとバンクビーエヌピーが合併を行いました。

三菱UFJ銀行は、2017年末からバンクダナモンへの出資を進めていました。今回の追加出資により、MUFGおよび三菱UFJ銀行はアジア・オセアニア地域における成長戦略の強化を図ります。また、バンクダナモンと共にインドネシアにおいて総合的な金融サービスを提供し、インドネシアの銀行業界全体のさらなる発展に貢献するとしています。

日本生命保険相互会社による株式会社LIFULL FinTechの一部事業の譲受け

日本生命保険相互会社引用元:https://www.nissay.co.jp/

日本生命保険相互会社(以下、日本生命)は、2018年12月に株式会社LIFULL FinTechの一部事業を譲受けました。

日本生命は、LIFULL FinTechの運営するインターネット上で集客・送客する事業などを中心に、一部事業を切り離した株式会社LHLを新設分割し、株式の100%を取得しました。

ライフスタイルや生活環境が変化する中で、生命保険に加入したいという顧客が増加しています。このような人たちは、インターネットを使用して生命保険商品に関する情報収集や保険に加入するための相談を行う経路を検索する傾向が増えています。

そのため今回のM&Aは、LHLの集客・送客事業の拡大を通じて顧客との接点をより多く持ち、日本生命グループとしてよりニーズに合致した生命保険商品・サービスを提供する目的で行われました。

株式会社新生銀行によるファイナンシャル・ジャパン株式会社の子会社化

新生銀行引用元:https://www.shinseibank.com/

株式会社新生銀行は、2019年5月に保険代理業を営むファイナンシャル・ジャパン株式会社の全株式を譲受け、新生銀行の連結子会社としました。

ファイナンシャル・ジャパンは、接客用の店舗を持たずに営業スタッフが顧客の自宅などへ訪問する保険代理店です。保険の専門家が顧客の生活設計に沿って複数の保険会社の商品を比較・検討するためのコンサルティングを行っています。

新生銀行は窓口で保険を販売しているが、個人年金保険など運用型の商品が中心です。個人向け保険ビジネスの強化を目的として、従来の銀行窓口で保険商品を販売するチャネルに加え、保証型の商品に強い代理店を譲受することにより、顧客の生活設計のコンサルティング能力を高めると共に、多様なニーズに応える販売チャネルの拡大・構築を図る目的です。

まとめ

近年、新しい技術や海外エリアの獲得を目的として、日本企業による海外企業のM&Aが活発に行われています。また、日本全体のM&A件数も増加しており、それに伴い国内の金融機関による資金の貸し出しも増加するでしょう。

加えて、銀行や保険会社といった金融業界の企業においても、業界再編やテクノロジーの獲得を目的としたM&Aがより活発に行われる可能性もあります。M&Aを検討中の経営者は、業界の動向を把握し、実際に行われた事例を参考にすることをお勧めします。

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