事業承継 M&A

いわゆる団塊の世代といわれる方たちがオーナーを務める中小企業は多くあり、その世代が引退を考える年齢を迎えています。その中で、「後継者問題」という経営課題に直面している企業が増加しています。

会社の後継者が見つからなければ、例え事業が黒字であっても廃業をせざるを得ないという事態に陥ってしまいます。

近年、このような後継者問題の解決策の方法の一つとして、M&Aが注目されています。本記事では、廃業から中小企業を救うための手段として活用されるM&Aのメリットや、事業承継を進めるためのポイントを紹介します。

事業承継問題を解決する「M&A」とは

「M&A」とは、「Mergers(合併) and Acquisitions(買収)」を略した言葉で、複数の企業が1つになったり、他の企業を譲り受けたりすることを指します。

事業承継 M&A

一口にM&Aといっても、手法はいくつかあります。

企業提携の方法は大きく「資本提携」と「業務提携」の二つに分けられます。前者の資本提携の手法のうち、「広義のM&A」では、企業買収・売却をはじめ、株式の持ち合い、合弁会社の設立などが含まれます。その中で経営統合を指す「狭義のM&A」には、「買収」「合併」「分割」といった手法があげられます。

一方、後者の業務提携としては、共同開発や技術提携、共同販売などがあります。中小企業のM&Aにおいて、よく活用される手法は「株式譲渡」です。株式譲渡は、譲渡企業の株式の過半数以上を譲受企業が譲り受けることで、経営権を譲受企業に移動させる手法です。

特にオーナーが株式の大半を保有していることの多い中小企業においては、手続きが比較的簡便であるという特徴があります。会社は経営者が変わるだけで引き続き存続できることとなり、従業員の雇用も維持したまま経営者は退任することができます。

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事業承継にM&Aを使うメリット

「事業承継」とは、経営者が会社の経営を後継者に引き継ぐことをいいます。

その中で、親族や従業員ではない第三者への承継=M&Aには、「会社の乗っ取り」「経営権をめぐる争い」といった大きな企業が行うような先入観があり、中小企業で活用される際の目的と異なるイメージを持っている方もいらっしゃるかもしれません。

実はM&Aは、事業承継問題の解決手段の一つとして注目されています。ここでは、M&Aを事業承継に活用するメリットについて説明します。

▷関連記事:事業承継が問題になっている背景と解決策としてのM&A

後継者問題の解決

日本企業の66.4%が後継者不在であるといわれており、深刻な社会問題となっています。この背景には、経営者のご子息が独立して自身で会社を経営していたり、一流の企業に勤めていたり、士業を行っていたり、社内に会社を継がせられる人材がいなかったりと、会社を承継できないケースが増えているということがあります。

このような状況の中で、会社の後継者を見つけるための手段の一つとしてM&Aを選択する経営者の方が増えています。

会社を廃業せず創業者利益を確保できる

もし会社の後継者が見つからなかった場合、会社は廃業せざるを得なくなります。

会社の資産を売却する場合、廃業では「清算価格」として評価され、売却額は低いものとなってしまいます。場合によっては資産を全て売却しても負債が残ってしまう可能性もあります。

M&Aにより会社や事業を譲渡する場合には、会社を存続させることができるばかりか、多くにおいて譲渡対価として創業者利潤を得ることができます。その際には資産についても評価され、譲渡価額に反映されることになります。

個人保証の問題を解決する

中小企業の経営者は、経営にあたって銀行からの融資をはじめとした債務について、個人として連帯保証人になる場合がほとんどです。経営者の中には、この個人保証に相当悩まされてきた方も少なくありません。

家族や従業員に同じような苦労をさせたくないと考えて、親族や従業員に会社を継がせたくないという経営者もおり、その場合にもM&Aによる解決が期待されます。

M&Aでは、ほとんどの場合で譲受企業が保証を引き継ぐことになり、経営者の個人保証を外すことができます。この点においても、廃業ではなくM&Aを行うメリットが大きいといえるでしょう。

雇用問題を解決する

会社が後継者問題を解決できずに廃業を選択するようなことがあれば、その会社で働いている従業員は職を失ってしまうことになります。

M&Aを行い、第三者へ会社を承継することにより会社を存続できれば、このような従業員の雇用問題も解決することができます。

実際、後継者不足による雇用問題は、日本の社会全体の問題となっており、後述するように、国が事業承継補助金や事業承継税制という形でM&Aを後押ししています。

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中小企業が事業承継を進めるためのポイント

事業承継 M&A

では、中小企業が事業承継を進めるためにはどのようなポイントがあるのでしょうか。

M&Aで事業承継をする場合はマッチングが重要

M&Aを行う際、自社の希望する条件に合った適切な譲受企業を見つけられるかが重要となります。しかし、自力で譲受候補企業を見つけることは容易ではありません。

また、M&Aを進めていく上では、自社の企業価値の算定や、多岐に渡る書類の準備や作成、会計・税務・法務などの専門的な知識が必要となる場面も多々あります。

そのため、特に中小企業のM&Aでは、譲渡企業と譲受企業の間に入り、中立的な立場で両社をマッチングさせ、M&Aにかかる業務のサポートを行うM&A仲介会社による助けを得ながら進めていくことがほとんどです。

税金にかかわる特例

事業承継にかかる問題は、もはや個々の会社だけのものではありません。伝統的な技術やノウハウが引き継がれず、多くの従業員の雇用が失われてしまうという、国家規模の問題となっています。

そのため国としてもさまざまな対策を行っており、その一つに「事業承継税制」があります。

会社の経営権は株主が有しており、事業を承継するために会社の経営権を譲渡する場合には、基本的に株式を譲渡することによって行います。会社の後継者への株式譲渡の方法には売買・贈与・相続といった方法が考えられますが、贈与や相続については相続税法による相続税や贈与税が課税されます。

この課税が原因で事業承継が滞ることがないように、納税義務を緩めているのが事業承継税制です。事業承継税制とは、会社の後継者が非上場会社の株式などを先代経営者から贈与・相続により取得した際、一定の要件のもと贈与税・相続税の納税が猶予されるという制度です。

適用を受けるためには、各都道府県庁に特例承継計画を提出する必要があり、その運用については専門家の手助けを得て行うことが望ましいでしょう。

後継者問題解決を支援する公的な補助金

国による政策の一つとして、中小企業庁が行う「事業承継補助金」というものがあります。

事業承継の際に、経営革新や事業の転換を行う中小企業も多くあります。そのため中小企業庁が、事業承継の内容によってはその取り組みにかかる費用の一部を補助することにより、中小企業の世代交代や新しい取り組みを支援する目的として創設しました。

一定の条件を満たせば、最大500万円まで補助金が支給されます。しかし、申請期間が限られていたり、書類の準備が必要であったり、使用用途・運用方法などについて報告する必要があるため、こちらも詳しくは専門家に相談することが望ましいといえます。

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まとめ

この記事では、事業承継にM&Aを活用することの必要性や、現在の市場環境、M&Aを進めていくポイントなどについて解説しました。

事業承継問題の解決手段としてM&Aは有効活用されており、実際に2018年の日本のM&A件数は3,850件、金額は29兆8,802億円と、件数・金額ともに過去最高を更新し、2012年以来7年連続の増加となりました。

事業承継においてメリットの多いM&Aですが、実施にあたっては会社法・財務会計上の手続きなど、多くの複雑な手続きを必要とします。上手く活用することでさまざまなメリットを得ることができるため、専門家の助言を受けながら、自社に適切な方法を検討して手続きを進めましょう。