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M&Aアドバイザリーとは?
「M&Aアドバイザリー」とは、M&Aに関するさまざまな業務についてアドバイスや取りまとめを行い、M&Aを成約までサポートする専門家のことをさします。
「M&Aコンサルタント」「ファイナンシャルアドバイザー(FA)」「M&A仲介」なども、細かな点は違いますが、基本的にM&Aに関連する業務を取り扱っているという意味では同じであるといえるでしょう。
M&Aを成功させ、短期間で結果を出すためには、M&Aアドバイザリーのような多くの経験を積んだM&Aの専門家のサポートを受ける場合がほとんどです。M&Aでは、法務的な手続きから税務処理、相手企業の選定にいたるまで、幅広い経験と知識を要します。M&Aにおいて、M&Aアドバイザリーの存在は心強い存在といえます。
この記事ではM&Aアドバイザリーとはそもそも何か、その位置づけや定義、業務内容、メリット、デメリットなどについて詳しく解説します。M&Aを専門家へ依頼する際の参考として活用できる内容です。
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年間3,000回の面談をこなすアドバイザーの声をもとにまとめた、譲渡を検討する前に知っておくべき5つの要件を解説。
・企業価値の算出方法
・M&Aの進め方や全体の流れ
・成約までに必要な期間
・M&Aに向けて事前に準備すべきこと
会社を譲渡する前に考えておきたいポイントをわかりやすくまとめました。M&Aの検討をこれから始める方は是非ご一読ください!
M&Aアドバイザリーの業務内容と手数料
まずは、M&Aアドバイザリーの業務や手数料について解説していきます。
M&Aアドバイザーの業務の種類について
一般的にM&Aは、M&Aの仲介業務を依頼する会社を1社に絞って契約(アドバイザリー契約)を締結します。そのため、M&Aアドバイザリーが携わる業務は、相手企業探しや交渉、各種書類の作成など非常に多岐にわたります。
条件の取り決め、資料作成、企業価値の算定、相手企業探し、面談および交渉、デューディリジェンスという6つの代表的な業務と、一般的な手数料についてわかりやすく解説します。
条件(譲渡価額、譲渡条件、スケジュールなど)の取り決め
譲渡企業(売り手)からM&Aの相談を受けた場合、希望譲渡価額や譲渡の条件、M&Aを進めるスケジュールといった内容について取り決めます。
M&Aアドバイザリーは、特定されない粒度で譲渡企業の情報をまとめた「ノンネームシート」をもとに譲受企業(買い手)に打診します。
そのため、譲渡企業が譲受企業に希望する先述の条件やスケジュールなどを予め取り決めておく必要があるのです。
譲渡企業の会社概要などの資料の作成
多くの場合、譲受企業へ打診する際に必要な資料をM&Aアドバイザリーが作成します。
譲受企業に打診を行い、検討してもらうために、ノンネームシートよりも詳細に企業情報をまとめた「企業概要書(IM)」を作成します。
企業概要書は譲渡企業の事業内容や希望する条件、企業の将来性など、譲受企業へ打診する際の重要な資料となるものです。
企業価値の算定
譲渡企業から提出された資料をもとに、譲渡企業にどれくらいの価値がつくのかを算出するための企業価値評価(バリュエーション)を行います。こちらは、M&Aアドバイザリーだけでなく公認会計士などの専門家が行う場合もあります。
企業価値で算出された価額は、M&Aの交渉を進めるうえで目安となる譲渡価額です。そのため、M&Aの交渉や最終的な譲渡価額を決めるために必要となります。
紹介、選定作業
譲渡企業の希望する条件に合致した譲受企業を選定し、ノンネームシートやIMでの打診を行います。譲受企業の要求も受入れる必要があるため、双方が納得する企業が選定され、紹介をします。
一般的には、自社で保有している譲受企業のニーズや、アドバイザリー自身のネットワークなどを活用して選定します。
▷関連記事:M&Aにおけるソーシングの重要性とは?具体的な業務内容も解説
譲渡企業への事前プレゼンテーション、面談や交渉、契約書作成実務
紹介、選定作業が進むと、譲渡企業に対して事業的なシナジーや譲渡後の会社の経営に対してイメージを持ってもらうために、譲受企業の会社案内や経営方針などを事前にプレゼンテーションする場合もあります。
その後、幹部陣同士の面談(トップ面談)や交渉を随時進めていきます。留意事項やスケジュール進捗の確認、M&Aに必要な契約書作成といった実務も、M&Aアドバイザリーが行う業務の1つです。
トップ面談を終え、信頼できる相手であることを双方が確認できれば、M&A成約までのスケジュールや譲渡価額、譲渡企業と譲受企業の双方で合意している条件などを定めた基本合意を締結します。
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デューディリジェンス(買収監査)を行う
基本合意の締結後、譲受企業が譲渡企業のリスクや価値、将来の収益性などについて監査を行います。この監査は「デューディリジェンス」とも呼ばれ、譲受企業が依頼した会計士や弁護士などが行うこともあります。
デューディリジェンスを行うことで、資産価値から組織の体制、登記内容、定款といった法務的な内容まで詳細な調査を行い、譲渡企業のあらゆるリスクの洗い出しやM&A成約後に想定されるシナジーの考察を行います。
多くの場合、譲渡企業はM&Aを初めて経験するでしょう。そのため、デューディリジェンスを円滑に進めるために、事前に疑問点を解消したり、不安な感情を取り除くこともアドバイザーの役割です。加えて、資料の準備や最終確認、対応の仕方なども含め、アドバイザリーを交えて綿密な準備を行います。
ここまでの一連の作業が終了し、譲渡企業と譲受企業の双方がM&Aを行うことに合意したら、最終的な条件や契約内容を定めた最終契約を締結します。その後、決済などが行われ、クロージングが完了します。
▷関連記事:M&Aの一般的な手続きの流れ 検討~クロージングまで
M&Aアドバイザリーに必要な資格
M&Aアドバイザリー業務において必要な資格はありませんが、経営実務全般、経営戦略、法律や会計・税務についての幅広いかつ専門的な知識が必要になってきます。
そのため以下のような資格が役立つでしょう。
・中小企業診断士
・公認会計士
・MBA
・税理士
またM&Aの業務に携わった経験も重要視されます。
・証券会社の投資銀行の業務
・会社の経営企画部門での業務
・総合商社でのPMI・M&Aの経験
・金融機関の財務部門での業務
・海外の買収先企業への駐在・協業経験
・経営コンサルティングファームの協業経験
ファイナンシャル・アドバイザーの必要性と仲介業務、経営コンサルティング業務の違い
最後にM&Aにおけるアドバイザリーの必要性と、ファイナンシャル・アドバイザー(FA)とM&A仲介業務、経営コンサルティング業務との違いについて解説します。
着任形式について(アドバイザリー形式・仲介形式)
M&Aアドバイザリーの主な形式は2つあり、それぞれ「アドバイザリー形式」「仲介形式」と呼ばれます。
アドバイザリー形式とは、譲渡企業と譲受企業のそれぞれにM&Aアドバイザリーが着任しM&Aを進める形式です。一方、仲介形式は同一のM&Aアドバイザリーが譲渡企業と譲受企業の双方を仲介する形式となります。
ファイナンシャル・アドバイザー(FA)と仲介業務は着任形式が異なる
上述のように、ファイナンシャル・アドバイザー(FA)は、譲渡企業か譲受企業のどちらかに着任し、一方の利益を最大化するためにアドバイスを行います。自社の希望する条件を実現できるように尽力してくれる反面、過度な要求を行ってしまうと相手企業が見つからないというケースもあります。
一方M&Aの仲介業務は、譲渡企業と譲受企業の双方の間に立ち、M&Aの相談から成約までのサポートをします。そのため、双方の条件のすり合わせを行ったり、中立的な立場からアドバイスを受けられます。
▷関連記事:M&AにおけるFA(アドバイザリー)とは?M&A仲介とFAの違い
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M&Aアドバイザリーと経営コンサルティング業務は業務範囲が異なり、専門性も違う
帝国データバンクの2021年の調査では、「後継者不在」もしくは「後継者未定」
と回答した会社は約26万社の内、16万社を超えています。こうした中、M&Aは中小企業の後継者不在という事業承継問題の解決策としても注目されています。
中小企業のM&Aについての経験があるM&Aアドバイザリーは、自社の経営を託す候補先を選ぶうえで、譲渡企業と譲受企業を結ぶ力強いパートナーとなります。M&Aを行う目的・課題に応じて、適切なパートナー選びがM&Aを成功に導くために重要といえます。
また、M&Aを検討している方の相談先として、前述したM&AアドバイザリーやFAに加えて、経営コンサルティング会社からも、M&Aについてのアドバイスを受けることは可能です。
しかし、経営コンサルティングは幅広く経営への助言を行うため、必ずしもM&Aに関わる情報や知識を網羅しているわけではなく、自社が欲しいアドバイスが得られないケースもあります。
経営に関する全般的なアドバイスを受けたり、M&Aの検討に至るまでの相談や問い合わせなどは経営コンサルタントの業務範囲ですが、実際にM&Aを検討、実施する際には、M&A業務に特化したM&Aアドバイザーのサポートを受ける方が、より具体的で適切な助言を受けることができるでしょう。
また、M&Aのサポート業務を行っているのは、M&A仲介会社だけではありません。大手証券会社や、投資銀行なども、M&Aの仲介事業を行っていることがあります。しかし上述のような会社は、基本的に上場企業とのM&Aなど大型の案件を対象にM&A仲介業務を提供しています。
また、外資系の証券会社や、外資系コンサルファームもM&A仲介業務を行っていますが、海外企業とのクロスボーダーM&A案件や、一定規模以上のM&A案件を中心に着手するため、一般的にこれらの企業は、中小企業のM&Aは対象にしない点に注意しましょう。
▷関連記事:中小企業のM&A 企業の合併・買収をアシストする仲介会社の役割とは
M&Aアドバイザリーに依頼するメリットとデメリット
メリット
M&Aアドバイザリーに依頼するメリットは、希望する条件をもとにM&A成約までのサポートが受けられる点にあります。
M&Aの検討の段階から企業価値の算出、書類作成、交渉などM&Aに特化した専門家のサポートを受けられるのです。こうしたM&Aの専門家であるM&Aアドバイザリーを介さずにM&Aを実施するのは、非常に難しいといえるでしょう。
デメリット
M&Aアドバイザリーに依頼することはメリットだけでなく、デメリットも存在します。
M&Aアドバイザリーによっては、契約の時点でその後の結果に責任の所在がない、という旨の同意を得ることがあります。そのため、M&Aの手続きの途中でトラブルが生じたり、結果が予想に反するものであった場合に、責任の追及ができず、曖昧になってしまう可能性もあるのです。
そのような事態を避けるためにも、知識や経験の有無などを確認したうえで、親身になって相談に乗ってくれるような信頼できるM&Aアドバイザリーを選定することをお勧めします。
M&Aを成功させるためには
M&Aを成功させるためには、M&Aアドバイザリーのような相談から成約までをサポートしてくれる専門家の存在が欠かせません。
M&Aはその目的や企業規模に応じて手続きや手法も異なります。また、専門的な知識が必要となる場面や多くの資料の準備など、一人で全てを行うのは非常に難しいです。
そのため、M&Aを成功させるためには高度な知識を持つ信頼できるM&Aアドバイザリーの存在は心強いものとなるでしょう。
M&Aアドバイザリー活用の際の注意点
情報漏えい
M&Aを行う際は、M&Aアドバイザリー会社に会社の技術・ノウハウなどの情報を提供しなければなりません。
社外秘の情報が漏れてしまった場合は大きな問題となり、売却する会社の価値が下がってしまったり、従業員に知られてしまうと組織崩壊のリスクが高まってしまいます。
情報を提出する際には、M&Aアドバイザリー会社と秘密保持契約を締結しますが、しっかり契約内容の確認をすることが必要です。
費用対効果を考える
まずM&Aアドバイザリー会社と契約する前に、費用対効果を考えなければなりません。
譲渡側としても買収側としても、M&Aアドバイザリー会社に手数料や着手金などを支払う必要があります。
また費用としては成功報酬が大半を占めているため買収金額が高いほど支払金額も大きくなります。
M&Aアドバイザリー会社に依頼する前に、慎重な検討を行う必要があります。
まとめ
M&Aアドバイザリーとは、M&Aに関する業務をトータルでサポートする専門家のことです。そのM&Aアドバイザリーにはアドバイザリー形式と仲介形式という2つの契約形式があります。
また、経営コンサルタントが全般的なビジネスアドバイスを専門とするのに対し、M&AアドバイザリーはM&Aに特化した助言を行います。
M&Aを成功に導くために、信頼できる優秀なM&Aアドバイザリーを見つけるには、企業が実施する無料相談などを利用してみるのもよいでしょう。