LPガス M&A

近年エネルギー業界では、規制緩和の流れを受けて小売販売の自由化が進んでおり、電力販売の自由化と都市ガス販売の自由化が相次いで行われました。LPガスの販売は元より自由化されていますが、都市ガスやオール電化への消費者の流出が見られています。また、それに伴い事業所の数も減少を続けており、LPガス業界全体としての市場の縮小傾向が見られています。

そのような状況の中、LPガス業界では市場縮小への対策としてM&Aが積極的に行われています。本記事では、LPガス業界についての解説から業界動向、業界の課題について、またLPガス業界で行われているM&Aの特徴と、実際の事例について紹介します。


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LPガス業界とは?最新の業界動向

LPガス業界の会社は、主に3種類に分けられます。LPガスを海外から輸入したり国内で生産する元売業、元売業から買ったLPガスを小売業者に販売する卸売業、そしてLPガスを一般家庭などに直接販売する小売業です。

そもそもLPガスとは、「Liquefied Petroleum Gas(液化石油ガス)」の略称で、プロパンやブタンなどの比較的液化しやすいガスの総称です。都市ガスとの違いが分かりにくいですが、都市ガスは主に天然ガスから生成され、主成分がメタンであるのに対し、家庭用LPガスの主成分はプロパン、工業用LPガスの主成分はブタンであるという違いがあります。

日本LPガス協会によると、2016年のLPガスの総供給量は約1,396万トンとなっており、2006年の1,814万トンと比べて約23%減少しています。また総需要量も同様に減少しており、2006年には約1,817万トンであった総需要量が、2016年には約1,430万トンとなっています。

この背景には同じエネルギー市場の競合である、都市ガス市場やオール電化市場の伸長があります。2017年の都市ガス販売量は、2007年と比較して約10%増加しており、またオール電化住宅の数も年々増加し、2025年には1,000万戸を超えると予測されています。

さらには、2016年より電力の小売自由化が、2017年より都市ガスの小売自由化が始まり、消費者が自由にエネルギーを選択できるようになりました。そのため、新たな顧客を獲得しようとエネルギー業者間での競争が激化しています。

また、このような他エネルギー業者との競争激化による収益性の悪化や、後継者不足を要因として、LPガス販売事業者数自体も減少傾向が続いています。2017年度に販売事業者数は約1万9,000事業所となっており、ピーク時の1968年と比べると約60%も減少しています。将来的に、日本の人口減少がより加速化すると予測されている中で、今後はより市場が縮小していき、さらに事業所数も減少していくと見込まれています。

LPガス業界のM&Aの特徴

LPガス M&A 2

LPガス業界において、多くの譲渡企業は大きく3つの課題を抱えています。

  1. 後継者不足
  2. ガスの配送ドライバーや点検員等の人材不足
  3. 市場縮小や競争が激化する市場における生き残り

LPガスの販売事業者の経営者の平均年齢は63.0歳であり、高齢化が進み次の世代への事業承継の問題が顕在化しつつあります。また従業員も高齢化が進んでおり、肉体労働が多く給与水準も高くない業界であるため就職先として選ぶ人も少なく、人手不足も大きな課題となっています。

譲受企業にとっても、都市ガスや電力会社との競合激化や縮小する市場の中で、売り上げを伸ばすことが急務となっています。M&Aはこのような譲渡企業と譲受企業双方の課題を解決する手段として有力であると言えます。

実際、LPガス業界では近年業界再編が進んでいます。2015年にはコスモ石油、昭和シェル石油、住友商事、東燃ゼネラル石油がLPガス事業を統合してジクシス株式会社を設立し、2017年には伊藤忠エネクスと大阪ガスが合弁会社の株式会社エネアークを設立しています。

ただし、このようなガスの元売会社同士のM&Aのみならず、卸売会社や小売会社を含めたM&Aも積極的に行われています。また近年はLPガス業界内でのM&Aにとどまらず、異業種の企業を買収することで、事業の多角化を目指す形のM&Aも多く見られます。

▷関連記事:国内M&Aの市場規模と現状。2018年のM&Aは過去最多の3,850件

国内の同業同士でのM&A事例4選

1.日本瓦斯株式会社による有限会社秋山商店の簡易ガス事業の事業承継

引用元:https://www.nichigas.co.jp/

2014年10月、日本瓦斯株式会社(以下ニチガス)は会社分割(簡易吸収分割)の手法を用いて、有限会社秋山商店より簡易ガス事業を6,000万円で事業承継しました。

ニチガスはLPガス事業だけでなく、都市ガス事業や電力事業など、エネルギー分野においても幅広い事業を展開しており、他にもリフォーム事業や設備工事事業、海外事業なども行っています。また、経済産業省と東京証券取引所が共催の「攻めのIT経営銘柄」に4年連続で選ばれており、エネルギー業界の中でもITの活用を積極的に行っています。

また、ニチガスはLPガス事業の一つとして簡易ガス事業を展開していますが、これに秋山商店が埼玉県で営む簡易ガス事業を統合させることにより、簡易ガス事業の一層の効率的運営と市場競争力の向上が可能であるとしています。

▷関連記事:会社分割とは?メリットから意味や種類、類型までを解説

2.株式会社東邦ガスによる株式会社ヤマサの子会社化

引用元:https://www.tohogas.co.jp/

2019年4月、国内3位のガス販売会社である株式会社東邦ガスが、ヤマサホールディングス傘下でLPガス事業子会社の経営統括を行っている株式会社ヤマサの全株式を取得して、ヤマサとその子会社を子会社化しました。

東邦ガスグループは、顧客に信頼され必要とされ続けるエネルギー事業者を目指して、都市ガスとLPガス、電気の3つのエネルギーの最適提案と新たなサービスによる付加価値の提供、リフォームを始めとしたくらしまわり事業の拡充に取り組んでいます。

ヤマサグループは、LPガスなどのエネルギー事業やくらしサポートに係わる事業、さらに地域密着・社会貢献活動など、長期にわたって地域の顧客との信頼関係を重視しながら事業展開を進めています。

東邦ガスは2019年度の事業計画においてLPガス事業の強化を掲げており、東海3県から活動エリアを広げ、顧客数や販売量の拡大を目指すとしています。また、LPガス事業強化の戦略の1つとしてヤマサとのM&Aを行いました。その結果、M&A実施後にはヤマサの7万8,000件のLPガス契約を合わせて東邦ガスグループのLPガス販売量は約1割増加する見込みです。

3.静岡ガス株式会社による島田瓦斯株式会社の子会社化

引用元:https://www.shizuokagas.co.jp/

2018年3月、静岡ガス株式会社が、同じく静岡県内でガスの販売事業を行う島田瓦斯株式会社の株式のうち55.8%を取得して子会社化しました。

静岡ガスは静岡県内において、都市ガスの製造、供給および販売や、LPガスの販売、リフォーム事業やガス機器の販売事業を行っている会社です。都市ガスの中では、東京ガス、大阪ガス、東邦ガス、西武ガスに次いで全国5位の売上高です。

島田瓦斯は1957年創立の会社であり、静岡県島田市を中心に都市ガス事業のほか、LPガス事業を展開しており、近年では静岡ガスより天然ガスの供給も受けています。

静岡ガスは、島田瓦斯の販売網を生かしてリフォームや電気事業の売上増を目的としています。また島田瓦斯が築いてきた地域における信頼と静岡ガスグループの技術力・提案力との相乗効果により、島田地域でのさらなる天然ガスの普及拡大と、顧客のくらしや地域のニーズに応えるとしています。

また、2018年12月には、静岡ガスグループの資本力・営業力・技術・ノウハウを活用し、より効果的・効率的な事業展開を目指すとして島田瓦斯を完全子会社化しています。

参考URL:島田瓦斯株式会社の株式取得に関するお知らせ
参考URL:簡易株式交換による連結子会社(島田瓦斯株式会社)の完全子会社化に関するお知らせ

4.カメイ株式会社による最上ガス株式会社の全株式取得

引用元:https://www.kamei.co.jp/

2019年1月、カメイ株式会社は最上ガス株式会社の全株式を取得してグループ会社の1つとしました。

カメイは1903年に石油、雑貨、砂糖、洋粉などの販売業を行う会社として創業され、現在では石油・LPガスなどエネルギー関連を中心に、食料部や建設資材部などの6つの事業を展開する総合商社です。最上ガスは山形県新庄市に本店を置き、LPガス及び灯油の小売業、並びに配管工事業を行っています。

カメイは東北一の供給体制・物流網を活かし、ホーム事業の中でも家庭用プロパンガスの販売や、導管によりプロパンガスを集団供給する簡易ガス事業を行っています。最上ガスをグループ内に迎え入れることで、ホーム事業の強化が図れるとしています。

また、カメイは他の事業においてもM&Aを積極的に活用して多角化を進めており、2018年4月には宮城県で調剤薬局を運営するM2メディカル株式会社を子会社化し、調剤薬局事業を強化しています。

▷関連記事:【2019年最新版】調剤薬局業界のM&A事例9選

LPガスの元売会社による異業種のM&A3選

上述したように、近年は異業種の企業を買収することで、事業の多角化を目的としてM&Aを活用する企業も多くあります。ここでは、LPガスの元売会社が異業種の会社とM&Aを行った事例についてご紹介します。

1.岩谷産業株式会社によるエヌ・ケイ・ケイ株式会社の子会社化

引用元:http://www.iwatani.co.jp/

2016年9月、岩谷産業株式会社が、冷媒缶、ブロワーなどの製造・販売を行うエヌ・ケイ・ケイ株式会社の発行済み株式を100%取得して子会社化しました。

岩谷産業は、1953年に日本で初めて家庭用LPガスの全国販売を始めた会社であり、現在も「MaruiGas」のブランドで全国310万世帯にLPガスを供給しています。エヌ・ケイ・ケイ株式会社は製缶から充填まで一貫して行うエアゾール*1メーカーであり、環境に配慮した製品を多く製造、販売しています。

岩谷産業は中期経営計画において「成長戦略の推進」を基本方針の1つとして、成長分野に積極的に経営資源を投入するとしており、今回の子会社化はその一環として行っています。またエヌ・ケイ・ケイが販売するノンフロンのエアゾールの需要は今後高まっていくと見込まれ、岩谷産業の販路を活かして海外でのシェア拡大を目指していくとしています。

*1 エアゾール製品:気化した液化ガスまたは圧縮ガスの圧力によって、内容物を容器の外に自力で霧状や泡状などにして放出させる製品

2. 株式会社ミツウロコグループホールディングスによる株式会社サンユウの株式取得

引用元:https://www.mitsuuroko.com/

2018年5月、株式会社ミツウロコグループホールディングスは、子会社である株式会社ミツウロコヴェッセルを通して、株式会社サンユウの全株式を取得しました。

ミツウロコグループは主力のエネルギー事業のみならず、健康・スポーツ事業やリース事業、飲食事業など多岐に渡って事業を展開しています。その中でも子会社のミツウロコヴェッセルは各地の営業拠点や販売事業者を通して全国約80万世帯の人々にLPガスを供給しています。

一方サンユウは太陽光・蓄電池・省エネ設備機器の販売施工で20年近くの歴史があり、かつ多くの販売施工実績を持っている会社です。

サンユウの太陽光・蓄電池・省エネ機器の販売施工や販売代理店ノウハウを活かして、ミツウロコヴェッセルが培ってきた事業の更なる発展が期待できるとしています。

また、ミツウロコヴェッセルとサンユウが持っている双方の販売ネットワークを活かすことで、販売チャネルを拡大するなど既存のエネルギー事業や他の事業分野とのシナジー効果も期待できるとしています。

▷関連記事:譲渡企業側こそ意識しよう。企業選定で欠かせないポイント「シナジー効果」とは

3.伊藤忠エネクス株式会社による大阪カーライフグループ株式会社の子会社化

引用元:https://www.itcenex.com/

2014年5月、伊藤忠エネクス株式会社は大阪カーライフグループ株式会社の発行済株式200株(発行済株式総数の51.95%)をNMC2007 投資事業有限責任組合より約60億円で取得して子会社化しました。

伊藤忠エネクスは全国108万世帯の家庭や法人のお客様にLPガスや都市ガス、ホームエネルギー販売事業や、LPガススタンドを運営するオートガス事業など、LPガスに関連した事業を多く行っています。

また大阪カーライフグループは、日産自動車系列ディーラーの中では、売上高約1,000億円という全国最大規模かつ大阪府下唯一のディーラーとなる日産大阪販売株式会社を傘下に持つ会社となっています。

伊藤忠エネクスはカーライフ部門において、燃料等の販売事業や、レンタカー、車販売、買取を行うCS(カースタ)事業の枠組みを超え、自動車関連事業への本格参入を目指してM&Aを実行しました。また大阪カーライフグループの事業資産を取り入れることで、燃料販売などを中心とした従来の事業基盤をより強化できるとしています。

まとめ

近年都市ガスやオール電化といった他のエネルギー事業との競争激化や、日本全体での世帯数の減少により、LPガス業界は縮小傾向にあります。それに加え、後継者不足や人手不足も大きな課題となってきており、業界として厳しい状況に置かれています。

その中で、LPガス業界では元売業者同士のM&Aに限らず、卸売業者や小売業者とM&Aを行うことにより、事業規模の拡大や効率化を図るケースが多く見られます。また、異業種の企業とM&Aを行うことで、LPガス事業以外での収益を伸ばす企業も増えてきています。

M&Aをうまく活用することで、LPガス業界の会社が抱える課題解決につながっていくでしょう。

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▷参考:成約事例