経営・ビジネス

2023/11/24

合弁会社とは?メリットや手続き、事例を解説

合弁会社とは?メリットや手続き、事例を解説

会社には株式会社や有限会社といった法律で決められた形がありますが、合弁会社について詳しくご存知でしょうか。
合弁会社の形態は、会社法の枠組みには含まれません。その基礎的な知識や概要、メリット・デメリットを理解しておけば、自社の経営戦略にとって必要な形態かどうかがわかります。

本記事では、概要から手続きまで、合弁会社の基礎をおさえられる内容を解説しています。合弁会社を設立すべきか迷っている方にとって、専門家に相談する前の知識としても欠かせないので、ぜひ参考にしてください。

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合弁会社の意味や他の法人形態との違い

M&Aにおける合弁会社とは

まずは合弁会社というものがどのようなものかということを、その意味や株式の出資比率、他の法人形態との違いに分けて説明します。次の図は、合弁会社についての基本的な概要になります。

合弁会社の意味

合弁会社とは、2つ以上の会社が、共通の利益のために必要な事業を遂行させることを目的として、契約などにより共同で設立し、または取得した会社のことです。公正取引委員会の企業結合ガイドラインでは、「共同出資会社」とよばれています。

設立の目的は、「特定事業を行うには、新会社設立のほうがスムーズである」「共同事業を行うためには新会社を設立したほうがコスト・リスクが分散できる」「外資会社の技術や知識、ノウハウ吸収が目的」など、場合によってさまざまです。また、合弁会社をジョイント・ベンチャーとよぶこともあります。

日本で合弁会社が導入されたきっかけは、外資企業の日本進出にあります。かつて日本では資本自由化を進める過程において、外資企業に関する法律(外資法・1950年)を定め、100%外資の出資による市場参入(新会社設立)を認めていませんでした。

そのため、外資企業は日本に進出するために日本企業と手を組み、共同出資という形で合弁会社が設立されたのです。

また、日本以外の国において、100%外国企業の進出が禁止されていたり、単独出資での参入が不可能な場合、現地企業と協力して合弁会社を設立し、海外での経営活動を行うこともあります。

株式の出資比率

2社で新たに株式会社として合弁会社を立ち上げる場合は、持分比率(出資比率)を50%ずつにすることが基本です。

ただし、新会社に対する貢献度(労務、人員、特許、製造ノウハウ、取引先、仕入れ先など)、工場などの現物出資など、新会社設立の目的や事業の方向性などを勘案して、継続的な運営を行うことが可能な合理的な出資比率を定めることになります。

また、合弁会社設立を主導するなど、設立前にメイン企業とサポート企業というような位置づけが決まっている場合は、メイン企業が多い割合で出資することがあります。いずれの場合でも、株式の持ち分が少ない企業でも、拒否権付株式などの種類株式の発行により、意思決定に参加する権利を得ることができます。

他の法人形態との違い

合弁会社は、会社法の規定にもとづいて設立される「株式会社」「合同会社」「合名会社」「合資会社」の4つの形態とは概念が異なります。共同出資により作られた会社のことを合弁会社と称しているのみです。

つまり、複数会社の出資によって作られた会社が「合弁会社」、そして、その形態は会社法にもとづき「株式会社」「合同会社」「合名会社」「合資会社」に分類される、ということになります。

合弁会社のメリット・デメリットを確認

どのようなメリット・デメリットが合弁会社にはあるのかを理解しておけば、自社の状況を考え、設立するかどうか判断するのに役立ちます。

合弁会社のメリット

まずは、合弁会社のメリットについて見ていきます。

コスト・リスク面でのメリット


合弁会社は複数の会社が出資する会社です。1社で1億円出資するより、2社で5,000万円ずつ出資するほうが、出資金を抑え低コストで新会社を設立できます。

また、合弁会社の経営を続けることが難しくなった場合でも、失う出資金を5,000万円に抑えることができ、リスク軽減、リスク分散となります。

提携先が持つ強みを活用できるメリット


また、合弁会社を共同で設立する相手企業が持つ、さまざまなリソースを活用できます。例えば、相手先のインフラを使えたり、ブランドを活用したり、ノウハウを活かしたりできることもあります。

その他にも、自社が持つ技術と相手が持つ特許などを組み合わせることで、単独で行うよりもスピード感のある開発が可能になることもあります。このように、合弁会社を設立することで、お互いの得意分野や強みをより効率よく活かせるのです。

海外進出が容易になるというメリット


海外進出の際には、外資企業のみでの企業設立を禁止している国にも、合弁会社を通して進出できます。また、現地の相手企業が既に持つその国独特の法律・ルールへの対応、トラブルの対処などのノウハウが役立つでしょう。

合弁会社のデメリット

次に、デメリットについて見ていきましょう。

方針を巡るトラブルが発生した際の対処が難しい


上述したように、出資比率を高め・低めに設定しても、合弁会社を共同で設立する相手企業の方針、意向を汲むことは欠かせません。

経営や開発、事業展開などにおいて、方針を巡る不一致が発生した際に、親会社と子会社のように支配関係にあるわけではないので、意思決定が遅れたり、対立状態になってしまうこともあります。

技術やノウハウが流出してしまうというリスクをはらむ


それまで自社で開発してきた技術や蓄積してきたノウハウ、活用している情報などを合弁会社に提供することによって相手先に流出してしまうという可能性があります。

このようなリスクがあるため、法的なリスクマネジメント体制を整えたり、相手企業のことをきちんと調べて慎重に検討するようにしましょう。

パートナー企業の社会的信用が自社に悪影響を及ぼす可能性がある

パートナー企業が何かしらの理由で社会的信用を失ってしまうと、自社にも悪影響が及ぶリスクがあります。
情報流出のリスクとあわせて、しっかりと事前調査を行うことが重要です。

合弁会社の設立手続きの流れ

合弁会社とは?メリットや手続き、事例を解説

合弁会社の設立においては、手続きという実務的な部分だけではなく、「パートナー選び」が重要になります。ここでは、パートナー企業選びから合弁会社設立まで順を追って解説します。

パートナー企業のリサーチ・選定

まずは、ともに出資するパートナー企業についてリサーチ、選定を行います。M&Aや合弁会社設立において、失敗の主要な原因のひとつに調査不足があげられます。それだけに、パートナーとなる企業に対する事前の調査は重要です。

すでに取引がある場合は、現場の声などから相手企業の社風や技術力、決済の正確性などを知れます。また、会社四季報や東洋経済などの企業情報誌、上場企業なら投資家向けのIR情報など、一般に公開されている情報源から調べることも可能です。

基本合意の締結

パートナー企業の情報を得たうえで、相手企業と合弁会社設立を進める場合、交渉を行い、基本的な戦略・ビジョンのすり合わせ、ルールの共有などを行います。

その際には、現実的な目標を掲げているか、双方にとって不利になる制約が設けられていないか、想定されるトラブル、そして対処法の確認などを行い、基本合意を締結します。

締結条件の確認

基本合意の後は、どの分野・事業にどれだけ出資するかなど出資の比率や利益の受け取り方、取締役の選定、少数株主の拒否権の設定、株式の譲渡制限など、主要条件をすり合わせます。

この段階では、自社とパートナー企業の負担は公平か、不平等になる条件がないかどうかなど、専門家に依頼して判断するようにしましょう。

合弁会社設立契約の締結

契約内容の検討を行い、双方が納得したら合弁会社設立契約(ジョイントベンチャー契約)の締結をします。契約書には、合弁会社設立についての「目的」「概要」「株式の保有比率」「取締役会役員」「重要事項」「経費負担」「剰余金の配当」などを定めます。

また、株式譲渡に関する定めを置く場合も多くあります。意図しない第三者が参画することを防止するためです。

設立完了

事前に定めた条件通りに新会社を運営していきます。新会社の業績などを鑑みて、追加出資をするのか、戦略を見直すのかなど、 その都度経営判断を行いましょう。

合弁会社設立時のポイント

合弁会社を設立する際に重要なポイントを解説します。

法人形態

合弁会社は必ずしも株式会社でないといけないわけではなく、「株式会社」「合同会社」「合名会社」「合資会社」の4つの形態からどの形態の合資会社にするかがポイントとなります。

事業規模などの違いを踏まえたうえで、どの形態の法人を設立するかをパートナー企業と話し合う必要があります。

合弁会社の事業計画を進めやすく、パートナー企業とフェアな会社運営ができるかどうかが重要です。

出資比率

合弁会社に対して出資する比率を決めることも重要なポイントとなります。この出資比率に応じて配当などの利益が変動するため、適切で公平・公正な出資比率を決定する必要があります。


一般的には、設立時にパートナー企業間で出資比率を50%ずつにするケースが多く見られますが、メイン企業・サポート企業の立場が決まっている場合はメイン企業の出資割合が多いケースもあります。


また、出資比率に差があっても、拒否権付株式などといった種類株式の発行により、出資比率が低い企業も意思決定に参加する権利を得ることができます。

撤退条件

合弁会社設立後、不採算事業が発生したり、パートナー企業間での対立が解消されないなどの要因で事業が失敗する可能性もあります。撤退のタイミングを逃して損失が膨らんでしまうと、両社の業績が悪化してしまいます。


合弁会社設立後に想定されるリスクやリスクが顕在化した際、どのように対応するかをパートナー企業間で細かくすり合わせ、合弁契約に撤退条件として含めておくことが重要です。


撤退条件には、
・パートナー企業間の対立が解決されない(デッドロック)
・一定期間内に業績が上がらない
・一定金額以上の損失が発生した
・M&Aなどによって経営権が移転した
・合弁契約への違反が発生した

などが考えられます。

合弁会社の具体的な事例

ここまで、合弁会社について概要から設立手続きの流れまで基本的な知識を解説しました。

株式会社東急レクリエーション、株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント、東京急行電鉄株式会社による株式会社TSTエンタテインメント設立

2018年12月、東急レクリエーション、ソニー・ミュージックエンタテインメント、東京急行電鉄の3社は共同で、エンターテインメント施設の企画運営を目的とした合弁会社のTSTエンタテインメントを設立しました。

TSTエンタテインメントは東京圏国家戦略特別区域の特定事業として推進されている「歌舞伎町一丁目地区開発計画」の複合エンターテインメント施設の運営を行います。

この計画はグローバルツーリストの多様なニーズに対応する地上48階、地下5階、塔屋1階の約225mの施設を、都内有数の観光拠点の歌舞伎町エリアにおいて創出することを目的とします。

東急レクリエーションの持つエンターテインメント施設運営のノウハウ、ソニー・ミュージックエンタテインメントの持つ多様なエンターテインメントコンテンツの開発および提供のノウハウ、東京急行電鉄の持つまちづくりやエリアマネジメントのノウハウの融合し、歌舞伎町発の大衆娯楽文化の創出を目指すとしています。

エイベックス・マネジメント株式会社と株式会社COOL JAPAN TVによるエイベックス&CJTV INFLUENCER株式会社の設立

2019年2月、エイベックス・マネジメントとCool Japan TVはエイベックス&CJTV Influencerを設立しました。

昨今、YouTuberなどのインターネットにおいて人気を集める「個人クリエイター」がマスメディアに出演するなど、タレントとの垣根がなくなり、消費者もタレントと「個人クリエイター」を区別することなく楽しむようになってきています。

そうした中、国内外でアーティストやクリエイターを輩出してきたエイベックスと世界53ヶ国で「YouTuber Academy」を開講し、7,000人のインフルエンサーネットワークによる海外プロモーション事業を展開するCool Japan TVによる合弁会社の設立となりました。

エイベックス&CJTV Influencerは自社で育成したYouTuber、インフルエンサーのマネジメントも行うことで、急成長を遂げる動画広告市場、インフルエンサー広告市場、インバウンド広告市場におけるシェア獲得を目指していくとしています。

まとめ

合弁会社について、意味、株式の出資比率、他の法人形態との違いなどといった概要から、メリット・デメリット、実際に設立する際の手続きの実務的、契約面での注意点などについて解説しました。

合弁会社は多くのメリットがありますが、デメリットやリスクもあります。不明点がある場合はM&Aアドバイザーなどの専門家に相談することをお勧めします。海外進出や新規事業参入で役立つ合弁会社という仕組みを上手に利用するには、専門家のアドバイスを活かして下さい。

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