工場 売却

工場の売却を希望する時には、不動産会社に依頼することが一般的ですが、M&Aの手法を活用して売却できることをご存知でしょうか。「不動産M&A」と呼ばれる手法を用いることで、通常の不動産売却よりも税金や費用を削減できる場合があります。

本記事では、工場を売却する際の注意点や手続き、必要な書類について解説したうえで、不動産M&Aという手法についてご紹介します。

工場売却時のメリットや注意すべき点

まず、工場を売却する際のメリットや留意しておくべきことについて解説します。

稼働率が悪く、採算が取れていない工場を売却することで、工場の管理費用を削減することができ、経営状況の改善につながります。また、工場を売却することで得られた資金を用いて、借入金を返済するなどして、財務状況を改善できることもあります。

ただし、工場を売却する際には主に次の3つの費用がかかることを留意しておく必要があります。

工場引き渡し時の解体費用

売却先が、そのまま建物や工場の設備を使用する場合には必要ありませんが、工場のままだと買い手の需要が大きくなく、売却先の候補を広げるためにも、工場を解体することがあります。工場が住宅地や倉庫、異なる業種の工場として新しく使われるようになる場合には、契約内容次第では引渡し時までに建物や設備の解体・除去する必要があります。

土壌の浄化費用

工場内で有害物質を使用していた場合は、土壌が汚染されている恐れがあり、その際には売却前に浄化しなければなりません。平成15年施行の土壌汚染対策法では、有害物質を取扱う事業者は土壌調査が義務付けられ、こうした調査で土壌汚染が認められた場合には、土の入れ替えや中和などの対策を取る必要があります。

もし土地の汚染調査や浄化を十分に行わず、売却後に土地の汚染が発覚した場合には、売り手は瑕疵担保責任*1に問われ、損害賠償をしなければならないこともあるのです。

*1 瑕疵担保責任:売買契約の目的物(購入したマンションや戸建住宅)に、購入した時点では明らかになっていない隠れた瑕疵があった場合、売り主が買い主に対して負う契約解除や損害賠償などの責任のこと

売却益に対する消費税

工場を売却する際には、原則消費税がかかります。2019年9月現在の消費税率は8%ですが、2019年10月より10%の消費税が課されることになります。ただし、事業者の基準期間(法人の場合は前々事業年度、個人の場合は前々年)における課税売上高が、1,000万円以下の場合には消費税が免除されます。また土地の譲渡の場合においては、消費税は非課税となります。

工場 売却

工場売却に伴う具体的な手続きの流れ

それでは、工場を売却する際にはどのような手続きが必要なのでしょうか。

相場調査

まずは、売却しようとしている工場が、おおよそどれくらいの価格で売却できるかを知るために相場調査を行います。売却価格のイメージを掴むことで、工場を売却すべきか、それとも引続き保有すべきかどうかの判断材料とすることができます。

相場調査は、広告やインターネットなどに掲載されている近隣の売り出し物件の情報や、国土交通省の「土地総合情報システム」などを参考にして行うと良いでしょう。

媒介業者による査定

次に、不動産会社に売却価格の査定を依頼します。査定額は不動産会社によって幅があるため、複数の会社に依頼して客観的に調べることをお勧めします。不動産一括査定のサイトを利用する場合や、工場の規模や種類に応じて不動産鑑定士に依頼することもあります。

媒介契約の締結

不動産業者を比較して、最終的に決めた業者と媒介契約を結びます。媒介契約とは不動産の売買や貸借などの契約の成立のために、媒介契約の有効期間や不動産の媒介価額、仲介手数料などを定めた契約のことです。

工場売却に必要な書類一覧

ここでは、工場売却の手続きを行う時に主に必要となる書類について解説します。

登記済権利証または登記識別情報通知書

工場を売却する際には、所有者の確認のためと、所有権の移転登記のために権利証が必要です。

2005年より権利書は登記識別情報へと移行し、オンライン上で管理されるようになりました。そのため、2005年以前の建物に対しては権利証が発行されていますが、2005年以降は登記識別情報通知書が発行されています。

登記事項証明書(登記簿謄本)

登記事項証明書とは、以前は登記簿謄本と呼ばれていたもので、不動産所有者の氏名・住所、建物の構造や大きさなどが記載された証明書のことです。登記事項証明書は、法務局の窓口で取得できる他、オンライン上で請求して郵送で受け取ることも可能です。

公図

公図とは土地の形状や地番、道路、水路などを図で表している法的な図面のことです。法務局の窓口や市役所などの税務課で直接取得することができる他、登記事項証明書と同様に、オンライン上で請求して郵送で受け取ることも可能です。また売買の際には、14条地図や確定的な測量を行った地図を使用することもあります。

固定資産税の納税通知書

不動産の所有者には、その評価額に応じて固定資産税が課されますが、1年に4回納付するごとに通知書が郵送されています。固定資産税の納付状況を確認したり、売却後の固定資産税を買い主との間で精算する際に用いられます。納税通知書の再発行は原則できないため、注意が必要です。

工場 売却

M&Aを活用した工場の売却

ここまで不動産仲介による工場の売却について解説してきましたが、「不動産M&A」という手法を活用することで工場を売却することもできます。

不動産M&Aとは、会社や事業の取得を目的として行う一般的なM&Aに対し、不動産の獲得を目的に行われるM&Aのことを指します。通常の不動産取引だと不動産の売却、購入が行われますが、不動産M&Aでは株式の売買に伴って、不動産の移動が譲渡企業と譲受企業の間で行われます。

この際、譲渡企業は不動産のみを所有する会社を会社分割で設立し、その会社の株式を譲渡するという手法を用いる場合があります。

▷関連記事:会社分割とは?メリットから意味や種類、類型までを解説

工場の売却を行う際、通常の不動産の売却の場合には、売却益に対して約40%の法人税などや、法人税を控除した残額に最大50%の所得税などが課されます。一方不動産M&Aでは株式が譲渡対象であるため、株式の譲渡益に対して20.315%の所得税などが課されます。また、上述した売却益への消費税もこの場合はかかりません。

また、工場を譲受ける側にとっても、不動産M&Aを活用した場合には通常の不動産の取得の際にかかる不動産取得税や登録免許税、印紙税などがかかりません。

そのため、不動産M&Aを活用することで、工場を譲渡す側、譲受ける側双方にとって通常の不動産売却よりも高い節税効果が見込めるのです。

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まとめ

工場を売却する際には、解体費用や土壌の浄化費用、消費税などの費用がかかり、また登記済権利証や登記事項証明書など、多くの書類が必要だということを認識しておくことが大切です。また、不動産M&Aを活用することで節税が期待できる場合があります。

本記事での必要書類や手続きの流れは、あくまで簡易的なものですので、通常の不動産取引や不動産M&Aを本格的に検討している場合には、専門家やM&Aアドバイザーに相談することをお勧めします。