みなし配当

株主が配当金として金銭などを受け取っていない場合でも、受け取ったとみなされる場合があります。このことをみなし配当とよびますが、みなし配当が発生するケースは多岐に渡り、分かりにくいことも多いです。

本記事では、みなし配当の定義や発生するケース、M&Aにおける取り扱いについて触れ、みなし配当の税務処理や、みなし配当が発生しない例外についても解説します。

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みなし配当とは?

みなし配当とは、剰余金の配当や分配などには該当しないものの、実質的に利益の分配となる場合には、税務上で剰余金の配当と同様に扱われて課税関係が発生する制度です。

みなし配当は法人税法24条にて定められていて、株主である内国法人が自己株式の買付けや合併などによって、金銭などを交付されたときに生じます。具体的には、株主が会社から出資の払い戻しを受ける場合と、組織再編の際に株主が別会社の株式や金銭を受け取る場合に発生します。

払い戻しを受ける場合は、主に以下のケースが考えられます。

  • 自己株式の取得
  • 会社が株主から自社の株式を取得する際、株式の評価額は通常、株主が出資した額よりも高くなります。

    この株主が出資した額と、株式の評価額との差額がみなし配当となり、所得税が課税されます。

  • 資本剰余金からの配当金の支払い
  • 資本剰余金とは、株主が出資したお金のうち、資本金に組み込まれないものです。そのため、資本剰余金から配当金が支払われても、株主にお金が戻るだけであるため、税法上は配当とは見なされず、みなし配当となります。

  • 会社の解散による残余財産の分配
  • 会社の残余財産は、株主が出資した分に加え、会社の利益も含まれています。そのため、実質的に会社が株主に配当を与えていることと同じになるため、みなし配当となります。

組織再編の場合にみなし配当が生じるのは、主に合併と会社分割に分けられます。この2つに関しては、以下で詳しく解説します。

M&Aにおけるみなし配当とタックスメリット

上述したように、M&Aでみなし配当が関わるのは合併と会社分割の場合となります。

合併は、2つ以上の会社が1つになることを指します。この際、消滅する会社の株主は、存続する会社から株式や金銭を受け取りますが、これらは存続会社が消滅会社の財産価値を承継することの対価として得られるものです。そのため、消滅会社の株主は、消滅会社から配当を受け取ったことと実質的に同じであるため、みなし配当として課税されます。

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会社分割とは、運営している特定の事業について、その権利義務の全部または一部を包括的に他の会社へと承継することです。

この時分割会社の株主は、事業を分割することの対価として、分割承継会社から株式や金銭を受け取ります。分割した事業は分割会社の財産価値の一部であるため、分割会社の株主は分割会社から配当金を受け取ったことと実質的に同じになります。
そのため、合併の場合と同様に、会社分割の場合もみなし配当として課税されます。

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みなし配当は、会計上は収益として算入されますが、税務においては配当所得に該当するため、所得税が課税されます。

上場企業の株式などの場合には、所得税および復興特別所得税の15.315%と地方税5%を合わせた20.315%が課税されます。非上場企業の株式などの場合には、所得税および復興特別所得税を合計した20.42%が課されます。

みなし配当

税務処理上はどうなるのか

みなし配当は法人株主が自己株式の買付けや合併などによって、他の法人から金銭などを交付されたときに生じます。この交付された資産の合計額が、交付の対象となった株式または出資に対応する部分の金額を超える場合、超過額がみなし配当となります。

例えば出資した額が80,000円で、交付された資産の合計額が100,000円であった場合、差額の20,000円がみなし配当となります。

このみなし配当は受取配当金と同様に扱われるため、受取配当金の益金不算入制度が適用されます。

受取配当金の益金不算入制度とは、会計上は収益として計上される配当も、税務上は出資割合に応じて一部または全部が益金に参入されず、課税所得の計算で控除されることです。

具体的な仕組みとしては、まず、内国法人の場合は、原則として配当の額の50%が益金に算入されません。

配当を受ける法人が配当を行う法人の発行株式総数の3分の1以上を6ヶ月以上に渡って保有する場合には、配当の全額から負債利子の額を控除した金額が益金の額に不算入となります。また、配当計算期間を通じて株式を100%保有する完全支配関係にある場合には、配当額の100%が益金に算入されません。

ただし、発行済株式総数の5%以下の割合しか保有していない場合には、配当額の20%のみが益金不算入となります。

また、外国法人についても、外国子会社益金不算入制度により、日本の親会社が外国子会社から受ける配当は、その配当の95%が益金不算入となります。

条件としては、日本親会社が発行済み株式などの25%以上を保有していることと、その保有期間が配当の支払い義務が確定する日の6か月以上前から継続していることが挙げられます。

みなし配当の場合でも通常の配当と同様に、益金不算入制度により、課税所得が控除されるため、節税につながるのです。みなし配当による節税に関しては、自己株式の取得を活用して行われることが多いです。

なお、個人がみなし配当を受け取った場合には配当所得となり、原則として確定申告の対象となります。確定申告をすることで、配当控除を受けることができます。

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みなし配当

みなし配当が発生しない場合

合併や会社分割、自己株式の取得の場合にもみなし配当が発生しない場合があります。

まず合併に関しては、適格合併の場合にはみなし配当が発生しません。適格合併では消滅会社の利益積立金が存続会社にそのまま引き継がれ、消滅会社の株主への金銭などの交付が生じないためです。

会社分割の場合も同様に、適格分割型分割の場合には分割会社の利益積立金が承継会社に引き継がれ、株主に金銭などを交付しないためみなし配当は発生しません。

また、自己株式を取得する際、みなし配当が発生しないケースとして、証券取引所などの市場で株式を取得した場合や、事業全部を譲り受けにより取得する場合、合併反対株主の買取請求権に応じた株式の取得の場合などがあります。他にもさまざまなケースでみなし配当とならない場合があるため、判断が難しい場合には専門家に相談することをおすすめします。

まとめ

自己株式の取得や合併、会社分割を行う場合には、みなし配当が発生することがあります。

みなし配当について知っておくことで、合併や会社分割を行う際に正しい会計、税務処理ができるほか、益金不算入制度により節税の効果を得られることにもつながります。今後の節税のためにも、配当金についてより理解を深めてみてはいかがでしょうか。