株式持ち合い

株式の持ち合いを検討していたり、過去に自社が持ち合いを行っていた場合、その意味や目的、解消方法を知っておくことは、時流として持ち合いの解消が進む現在では、円滑な経営を行ううえで重要になります。

本記事では、株式持ち合いの意味や解消方法などを、基礎知識から会社法などに関する部分までまとめています。専門家に相談する際に、欠かせない基礎知識になります。

株式持ち合いの意味や株式保持について

ここでは、株式持ち合いがどういったものであるのか、その意味や実施する理由を紹介します。

株式持ち合いの意味

株式の持ち合いとは、2社以上の複数の会社が、互いに発行済み株式を取得、保持することです。実施する際には、持ち合いをする会社間での交渉後、合意を経て相互保有株式を取得することになります。

会社同士の協力体制を築く、という意味では業務提携と似ていますが、株式持ち合いは株式を持ち合うという点が異なっています。株式の持ち合いの目的・メリットとしては主に以下の点が挙げられます。

  • 原則、長期におよぶ持ち合いによる安定株主の形成
  • 複数企業での持ち合いによる会社の集団化・結束力強化
  • 友好関係にある会社同士による会社間取引の強化
  • 友好的な会社が株式を保有することで敵対的買収の回避

株式保持に至る理由

前述の目的・メリットが株式の持ち合いを行う理由になります。

会社間の結束力を高めて、経営資源を有効に活用したり、他社による敵対的買収を防止することで、安定した経営を行うことができます。友好的な持ち合いの関係を築くことができれば、会社間の関係は友好的になるため、事業を行う中で長期にわたる取引を持続できることになります。

歴史的には、1960年代の財閥解体後、財閥グループ企業が結束を強めるために株式持ち合いが活用されました。その後、資本の自由化に伴った外資企業による買収への対抗策としても行われるようになりました。

バブル経済期には株式を発行して資金調達する方法が多くとられ、株式の持ち合いが活発化しましたが、バブル経済崩壊後には、都市銀行などが持ち合い株式の売却に迫られ、持ち合いの解消が進みました。

▷関連記事:TOB(株式公開買付)とは?友好的・敵対的TOBの意味や防衛策を解説
 
株式持ち合い

株式持ち合いの解消理由や手続きの方法を確認

上述のようにメリットが多いように思われる株式持ち合いでは、友好的な関係になった企業との株式持ち合いを解消する理由がわからない、という方も多いかと思います。

しかし実はデメリットも多く、近年では、後述のコーポレートガバナンス・コードの導入により、解消の動きが進んでいます。ここでは、解消の具体的な理由や手続きについて解説します。

株式持ち合いの解消理由

まず、多くの株式を他の会社が保有していると、相手の会社が強い議決権を持ちます。特定の会社が多くの株式を持っている場合、その会社が株主総会などにおいて意見を述べなければ、株主総会の形骸化が発生します。また、個人の株主の意見は、多くの株式を保有する会社がいては経営に反映されにくくなってしまいます。

このような株主総会の形骸化や持ち合い株式が生む安定株主によって、本来働く市場原理が機能しにくくなり、投資家などは資金を注入すること自体に懸念を示すようになりかねません。

次に、何らかの理由で持ち合い会社の片方の株価が暴落した場合、もう一方の会社も市場から経営を不安視され、一緒に株価が暴落してしまう危険性があります。特にバブル崩壊時にはこの事象が顕著で、株式の持ち合いをしていた会社集団ごと経営悪化し、結果として株式の持ち合いの解消が増加しました。

また、会社と銀行という形での持ち合いでは、株価の下落で銀行の経営が不安定化することを防ぐため、銀行が保有する持ち合い株を市場を通さずに時価で買い取り、時間をかけて市場に流通させる「銀行等保有株式取得機構」が2002年に誕生しました。

さらに、上場企業のあるべき姿を示す「コーポレートガバナンス・コード」(2015年6月施行)において、持ち合い株保有に関して合理的説明が必要となり、持ち合いの解消は加速しています。

実際に、小松製作所やパナソニック、大林組、資生堂などの大企業が株式持ち合い解消の動きを見せています。多くの企業が持ち合い株を売却し、資本を自社の成長戦略へと活用する風潮が強まっています。

コーポレート・ガバナンスの解説

コーポレート・ガバナンスとは、企業経営を監視する仕組みのことで、企業内の不正や粉飾決算を防いだり、企業が効率的に業務遂行するための仕組みのことを指します。

具体的には、取締役と執行役の分離、社外取締役の設置、社内ルールの明確化、コンプライアンス体制の確立などが行われ、企業統治・企業統制ともいわれます。

この考えを元に、日本企業の国際的な評価の向上や海外からの投資を促進することを狙いとして、上場企業が守るべき行動規範を示した企業統治の指針を、金融庁と東京証券取引所が取りまとめました。それがコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針、以下CGコード)です。

CGコードは2015年6月に施行されましたが、2018年6月の改定では、株の持ち合いについて一段の説明責任を求めることが決まり、このことが持ち合いの解消を促進させています。

株式持ち合い

株式持ち合いの手続きの解消方法

まず、株式の持ち合いを解消するため、一般的に両社で合意をします。

相手の会社の株式を持っていることが事業上意義がなかったり、合理性に欠けるといった理由で通知なしに一方的に株式を売却すれば、それまでの友好的な関係が壊れてしまう可能性もあります。事前に解消について交渉の場を持ち、双方納得のもと解消へと進みましょう。

解消は主に、持ち株を第三者に売却する方法と、自社で自社の株式を取得する2つの方法があります。

第三者に売却することで解消する際、市場価格が未設定の株式の場合、株式の持ち合い会社同士で合意した価格で売却すれば持ち合いは解消されます。

一方、他社が保有していた持ち合い株を自社で取得する場合、特定の株主(会社)から市場を通さずに取得するには、会社法160条および161条により、市場価格のある株式でも株主総会の特別決議が必要になります。事前に株主総会を招集して合意を得る必要があったりと、時間と工数のかかる手続きになります。

また、上場企業においては必要な手続きを経て、市場に売却する方法をとることもできます。

株式持ち合いにおける議決権の制限

ここまで、株式持ち合いの意味や理由、解消の方法などについて解説しました。その中で、持ち合い株式においても議決権があることを紹介しましたが、ここでその取り扱いを説明します。

議決権の制限

持ち合い株式の議決権の制限に関しては、会社法308条に規定があります。

その内容は、A社がB社の株式を25%以上保有している場合で、B社もA社株を保有しているときは、B社はA社の株主総会で議決権を行使できない、というものです。

B社もA社株式を25%以上保有しているときは、A社もB社の株主総会で議決権を行使することができません。25%以上の相手方の会社の株式を保有している会社が、相手方の会社を通じて自社の株主総会で、有利な権利行使をさせないことが目的とされています。

商業登記における相互保有株式のチェック

上述の議決権の制限については、実務上では議決権に制限がかかるほどの相互保有はほとんどないといえます。また、商業登記規則改正後は会社登記申請(商業登記申請)時に、株主リストの添付・提出することが必須になりました。しかし、決議を有効に成立させるためにも、最新の株主名簿を確認するようにしましょう。

まとめ

株式の持ち合いは、相互に株式を持ち合うことで会社同士の良好な関係を築き、長期にわたる取引を持続させるなどのメリットがあります。しかし、コーポレート・ガバナンスや会社法などの新たな規定、株主総会の形骸化を解消する目的などにより、株式持ち合いは解消される傾向にあります。

本記事で解説した持ち合いの意味、理由、議決権の制限といった内容を参考にしつつ、株式の持ち合いが正しい選択なのか、過去に実施された持ち合いを解消すべきかなどをM&Aなどの他の選択肢と比較、検討しましょう。