「建設業ハンドブック2018」によると、2017年度の建設業界の市場規模は56兆円であり、2003年以降で最も高い数字となりました。2018年度も東京オリンピックによる建設需要の高まりを背景に、さらに市場規模が伸びると予測されています。本記事では建設業界の定義や現状を簡単に紹介したうえで、建設業界で行われたM&Aの事例について様々な角度からご紹介したいと思います。

また以下の記事では、建設業界のM&Aにおいて抑えておくべきポイントやFUNDBOOKにいただいた相談例の一部を紹介しています。

▷関連記事:建設業界の最新のM&A動向と、抑えるべき6つの注意点

〜目次〜
建設業界とは?最新の業界動向を紹介
業界大手によるM&A事例4選(直近5年間)
2018年の建設業界のM&A事例4選
注目のM&A事例3選
専門家によるコメント
まとめ
この1冊で住宅建設業界のM&Aの事情が分かる

今回話を聞いたM&Aアドバイザー


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中村 優介

株式会社FUNDBOOK
営業戦略本部 エグゼキューション部
アソシエイトヴァイスプレジデント

明治大学卒業後、2010年に野村證券入社。8年間主に中堅企業オーナーの新規開拓、資産管理業務に従事。在職中は相続・事業承継の提案を得意とし、全セールスでも上位1%の営業成績を残す。証券営業を通じて後継者不在の経営者が多いことを実感し、事業承継M&Aで経営者の役に立ちたいという思いからM&A業界を志す。シニア・プライベートバンカー資格、CFP及び1級ファイナンシャルプランニング技能士資格保有。

建設業界とは?

建設業とは、建設業法において「元請、下請その他いかなる名義をもってするかを問わず、建設工事の完成を請け負う営業」と定められており、ここでの建設工事とは、2種類の一式工事と27種類の専門工事を合わせた29種類の工事を指します。構造としてはゼネコンが官民からの発注を受注し、請け負った仕事を下請けの専門工事業者に割り振ります。その専門工事業者が技能工と呼ばれる中小の事業者に仕事を発注して建設が行われる、という流れになっています。

業界の現状としては2011年以降、東日本大震災の復興需要や民間投資の増加、2012年末からはアベノミクスによる公共投資の増加や国内景気の好調により建設需要が高まってきました。さらには2020年の東京オリンピックに向けて鉄道網や高速道路などのインフラ整備が進んでいくため、今後さらに成長していくでしょう。

しかし2020年以降、人口減少により需要は低下し国内市場は低迷していくことが予測されています。これに対処するために大手ゼネコンはM&Aによる海外進出や他業種への参入、中小企業は合併による経営の効率化を図り始めており、今後もこの傾向は続くと考えられます。

▷関連記事:国内M&Aの市場規模と現状。2018年のM&Aは過去最多の3,850件

業界大手によるM&A事例4選(直近5年間)

1. 株式会社大林組による大林道路株式会社の完全子会社化

引用元:https://www.obayashi.co.jp/

建設業界最大手の株式会社大林組は2017年6月に舗装工事、土木工事、建築工事等の請負を主業務とする大林道路株式会社を公開買付けにより完全子会社化しました。

会社名から分かるように大林道路は以前より大林組の連結子会社でしたが、将来的な市場縮小や公共投資への減少、人手不足への対策としてグループ全体の事業効率を上げ、グループ各社の収益力の向上を図るために子会社化しました。

2.株式会社長谷工コーポレーションによる株式会社総合地所の買収

引用元:https://www.haseko.co.jp/hc/

株式会社長谷工コーポレーションは2015年5月、子会社である不二建設株式会社を通して不動産分譲事業、不動産ソリューション事業、マンション管理事業を展開する株式会社総合地所を子会社化しました。

このM&Aにより、長谷工グループの施工実績と総合地所のデベロッパーとして顧客に関わってきた経験とノウハウが融合して、よりお客様のニーズにあったサービスを提供できるとしています。

また、分譲マンション事業や賃貸マンション管理事業は両社ともに以前から行ってきた事業であるため管理戸数の増大が見込め、共同発注などの場面で規模のメリットを得る狙いです。

3.大東建託株式会社による在宅介護サービス事業会社の株式会社ソラストの持分法適用関連会社化

引用元:http://www.kentaku.co.jp/

賃貸アパート・マンションの建設事業及び管理・ 運営事業を主軸とし、更にデイサービスを主とした介護事業や保育事業も行う大東建託株式会社は、2015年12月に医療関連受託事業、介護事業等を展開する株式会社ソラストを持分法適用関連会社化しました。

大東建託グループは在宅介護に強いソラストグループの関連会社化を通して、入居者への介護サービスを充実させて自社物件の価値を高める目的があります。

▷関連記事:【2019年最新版】介護業界のM&A事例11選!専門家による解説付き

4.鹿島建設株式会社による、米国のFlournoy社の買収 

引用元:https://www.kajima.co.jp/

鹿島建設株式会社は北米の子会社であるカジマ・ユー・エス・エー社(KUSA)を通して、2017年12月に米国南部で賃貸集合住宅の開発・建設・運営事業を自社完結型で行うFlournoy(フラワノイ)社との間で、同社の買収に関する売買契約を締結しました。鹿島建設は、この子会社を通してこれまでにも3件の買収を行っており、アメリカへの進出を積極的に行っています。

鹿島建設は、KUSAが持つ流通倉庫などの産業分野に加え、フラワノイが持つ住宅分野における開発プラットフォームを新たに得ることで、米国不動産市場の景気サイクルに対して柔軟に対応できるように収益源の多様化を図る狙いです。

2018年の建設業界のM&A事例4選

1.サンユー建設株式会社による型枠工事の行方建設株式会社の子会社化

引用元:http://www.sanyu-co.co.jp/

1950年に設立され、建築事業、不動産事業、金属製品事業を主要事業としているサンユー建設株式会社が、1995年に設立され大手建設会社の協力業者として型枠工事業を手掛けている行方建設株式会社を2018年4月に子会社化しました。

サンユー建設が持つ経営資本及び営業力と、行方建設の持つ高い技術力を相互に活用することで競争力と収益力を強化し、企業価値向上を図る狙いがあります。

2.ファースト住建株式会社、アオイ建設株式会社を子会社化

引用元:http://www.f-juken.co.jp/

ファースト住建株式会社は戸建住宅の分譲を主力事業とした、関西圏に多くの支店をもつ会社です。2018年5月、神奈川県を中心に不動産販売や建築工事請負を展開しているアオイ建設株式会社の株式のうち60%を取得して連結子会社化しました。

今後の展開として、2021年4月に残り40%の株を取得して完全子会社する計画を立てています。ファースト住建は、アオイ建設を子会社化することで関東圏における分譲事業の拡大を目指しています。

3.株式会社淺沼組による、シンガポールの外壁塗装会社・SINGAPORE PAINTS &CONTRACTORの子会社化

引用元:http://www.asanuma.co.jp/

民間建築工事を主力としてリニューアル事業にも力を入れている株式会社淺沼組が、2018年8月にシンガポールで建物外壁塗装・修繕工事を展開しているSINGAPORE PAINTS & CONTRACTOR PTE. LTD.を子会社化することを発表しました。

2018年中に全株式の80%を約5億1,600万円で取得し、残りの20%を2023年に取得する予定です。淺沼組はASEAN地域でのリニューアル事業の展開を目指しており、その第一歩としての買収であるとしています。

4.日本コンクリート工業株式会社によるフリー工業株式会社の子会社化

引用元:https://www.ncic.co.jp/

コンクリート製品を製造販売している日本コンクリート工業株式会社は、2018年1月に1975年創業の法面工事、擁壁工事、道路拡幅工事など土木分野の工事と建設資材の販売を行うフリー工業株式会社を子会社化しました。

フリー工業が持つ工事に関する高い技術力・開発力と日本コンクリート工業が持つコンクリート製品製造に関する技術力・開発力を融合することにより、大きなシナジー効果*1を得ることができると述べています。

*1シナジー効果:相乗効果や協働作用とも言われ、複数の事業が掛け合わされることによる、単純な足し算以上の効果のことです。詳しくは以下の記事を参考にしてください。

▷関連記事:M&Aの成功を左右する「シナジー効果」とは。種類や事例と評価方法を紹介
 

注目のM&Aの事例3選

近年では、建設業界に属さない企業によるゼネコンの買収事例が増加しています。ここではM&Aを用いた異業種による建設業界への参入事例を3つご紹介したいと思います。

1.パナソニック株式会社による株式会社松村組の株式取得(連結子会社化)

引用元:https://panasonic.jp/

2017年12月、大手家電メーカーのパナソニック株式会社は、1894年創業のゼネコン会社である株式会社松村組の株式の過半数を取得し、2018年に全ての株式を取得して完全子会社化しました。

パナソニックの先進技術や企画設計力と松村組の施工能力、ノウハウなどを融合することで、より付加価値の高い住空間を提供し、事業拡大を図るとしています。
また、パナソニックとしては住宅部門の強化にあたって、施工管理技士などの建設技術者の確保も買収の目的の1つだと予想されます。

2.フィンテックグローバル株式会社によるゼネコンの岡山建設の子会社化

引用元:http://www.fgi.co.jp/

フィンテックグローバル株式会社は、企業を支援するブティック型投資銀行として、企業投資と投資銀行業務を中心に事業を展開している会社です。2014年2月に地元密着型の中規模ゼネコンである株式会社岡山建設を持ち株会社の設立により買収しました。

フィンテックグローバル株式会社は、子会社に個人を対象にした不動産事業を展開している株式会社ベルスを保有しており、事業の拡大を目的とした買収を行いました。

3.株式会社積水ハウスによる鳳ホールディングス株式会社の持分法適用関連会社化

引用元:http://www.sekisuihouse.co.jp/

2015年11月、大手住宅メーカーである株式会社積水ハウスは、準大手ゼネコンである株式会社鴻池組を子会社にもつ鳳ホールディングス株式会社を持分法適用関連会社として、鴻池組との業務提携を行うことを発表しました。

積水ハウスはこれまで外注していた大型マンションの建設などを鴻池組に任せ、都市開発をグループ全体で行う体制にするとしています。これにより、施工費用などのコストを削減して利益率を向上させる狙いがあります。

▷関連記事:M&Aの「業務提携」とは?M&Aと提携の違いは?アライアンスの基礎知識

専門家からのコメント

FUNDBOOK M&A 中村 優介

2015年くらいまでは大企業による異業種間のM&Aが多く行われていました。しかし 2018年現在は、ゼネコンが他の業種に参入してきていません。理由としては、 参入メリットがそれほど大きくないことや、業界全体が縮小していることが考えられます。その代わり、この1年半(2018年11月現在)に関しては同業種によるM&Aが増えています。
 
年商数十億円の地域密着型の工務店などでは、モデルハウスのような同じような家を作る大手のハウスメーカーよりも、様々な種類の家を作る中堅のゼネコンと組みたいと考えている方も多くいらっしゃいます。それらのことから今後の展開として、年商数百億円の中堅ゼネコンが住宅産業に参入してくる可能性は十分あると思います。最近だと今年の7月には、オープンハウスとホークワンの資本業務提携も話題となりました。
・日経新聞『オープンハウス、ホーク・ワンの発行済株式の一部を取得・簡易株式交換(完全子会社化)を決定 』 https://goo.gl/weSgGm
 
建設業界に限った話ではないですが、現在はアベノミクスや東京オリンピックにより景気が上向いています。景気が良いときには金利が低くなり、譲受企業にとってはM&Aがしやすい状況です。さらに2019年の10月より消費税が10%に増税されることもあり、譲受企業としては増税前にM&Aを行いたいと考えるでしょう。譲渡企業にとっても消費税増税後は売りづらい状況になる可能性があるため、増税前にある程度M&Aの目処を立てておくのが良いですね。通常M&Aに1年かかりますので、タイトなスケジュールではありますが、早いうちに行うことをおすすめします。

まとめ

アベノミクスによる公共投資の増加や、好景気、東京オリンピックによるインフラ整備により、建設業界は好調は今後も続いていくでしょう。しかし、先にも述べたように2020年のオリンピック以降は、国内の人口減少の影響もあり建設需要が下がっていくことが予想されています。
将来的な市場の縮小に対応するために、M&Aを活用して異業種への参入を行ったり、業務の効率化を図ることが必要となるでしょう。

▷関連記事一覧:M&Aの動向と業界別の事例
▷参考:事業承継・M&A譲渡案件一覧
▷参考:成約事例

この1冊で住宅建設業界のM&Aの事情が分かる

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