事業承継失敗により生じる問題と解決策

2017/10/20

1.後継者問題や健康問題を理由に廃業せざるを得ない中小企業の増加

近年、廃業する企業が増加しています。東京商工リサーチが2016年に行った調査[1]によると2016年に休廃業・解散した企業数は2万9,583件で、1日に約80社が休廃業・解散しています。この数字は東京商工リサーチが2000年に調査を開始して以降、最多の件数になりました。また、休廃業・解散した企業の代表者の82.3%が60歳以上でした。高齢の経営者を中心に廃業を決断しています。

ではなぜ廃業が増加しているのでしょうか。

日本政策金融公庫総合研究所が2016年に公表した「中小企業の事業承継に関するインターネット調査」[2]によると、中小企業経営者が廃業を検討している理由は「当初から自分の代でやめようと思っていた」が最も多く38.2%で、「事業に将来性がない」が27.9%でした。続いて「子どもに継ぐ意思がない」が12.8%、「子どもがいない」が9.2%、「適当な後継者がいない」が6.6%と後継者問題関連の理由が28.6%を占めました。後継者問題や事業の将来性が主な要因として廃業を決断する経営者が多いようです。

中小企業庁が2013年12月に帝国データバンクに委託して行なった「中小企業者・小規模企業者の廃業に関するアンケート」[3]によると廃業した企業の資産と負債状況は41.1%の企業で資産超過、36.0%の企業で資産と負債が均衡していました。また、廃業時の経営状況は44.1%の企業が経常黒字であり、1期の経常赤字企業が19.8%を占めました。このように経営余力がある中、廃業をせざるを得なかった企業が多く見受けられます。

2.廃業を行う金銭面のデメリット

廃業は金銭面で非常にデメリットが大きいのが実態です。2014年に中小企業庁が野村総合研究所に委託して行なった「中小企業における事業承継の調査」[4]によると、実際に廃業する際に心配な点で最も多かった回答が「廃業後の生活費の確保」で、5割強を占めました。2番目に多かった回答は「廃業するとした場合のコスト」で、約20%でした。このように廃業する際に起こり得る最も大きな課題は金銭に関することです。

会社清算の場合、在庫商品や土地、事業資産等は大幅に減額され、退職金は増額されます。また、決算確定後に先に法人税を納めた後に株主への配当の際に最高で55%もの配当課税が発生します。二重課税であり、税率も非常に高くなっています。会社精算の結果、手元に残る金額は想像以上に小さい額になるでしょう。また、経営状況に余裕がない場合や負債を抱えている場合は会社清算により、自宅や車等の個人資産を売却しなければならないケースがあります。個人資産を売却した上でも負債が残るケースもあるため引退後の生活に不安を残すことになります。

3.関係者にも大きな影響を与える廃業

廃業によって生じる問題は金銭に関することだけではありません。廃業により、経営者は従業員を解雇しなければなりません。また、取引先にも多大な迷惑をかけることになります。「中小企業者・小規模企業者の廃業に関するアンケート調査」[3]によると、中小企業経営者が廃業時に直面した課題として最も多かった回答が「取引先との関係の清算」で全体の約40.7%でした。多くの経営者が取引先との関係の清算を課題としているようです。また、3番目に多い回答として16.4%の経営者が「従業員の雇用先確保」の課題に直面しています。

廃業は経営者や経営者家族のみならず取引先、従業員等多くの人に影響を与えます。そのため、廃業を決断することは容易ではありません。そこで以下では廃業の代替案としてM&Aによる事業承継に関して説明していきます。

4.M&Aによる事業承継

近年、M&Aによる事業承継が増加しています。みずほ総合研究所が2015年に公表した「中小企業の資金調達に関する調査」[5]によると、20〜25年前に事業承継を行った経営者の内、社外の第三者へ事業承継を行った経営者は全体のわずか5.5%でした。しかし、直近の5年間に社外の第三者へ事業承継を行った経営者は全体の39.3%で、最も多い事業承継形態となっています。

レコフデータ[6]によると、日本企業が関連するM&Aは1999年に1,000件ほどでしたが、2016年には2倍以上の2,500件を超えました。日本におけるM&A件数も年々増加しており、M&Aは大企業のみならず中小企業においても重要な経営戦略の一つとして活用されています。

上述したように、廃業を考えている経営者の多くが後継者問題と会社の先行き不安を抱えていますが、M&Aにより解決が可能です。後継者を一から育成するには多くの時間を要しますが、M&Aの場合、その必要はないため比較的スムーズな事業承継を行うことが可能です。

本社部門の統一や一括発注等による経営の効率化、技術やノウハウ、顧客の共有等のシナジー効果により、さらなる業績の向上も期待できます。また、大企業の傘下に加わることで安定した経営を行うことが可能になります。中小企業にとって風当たりの厳しい経済環境の中、他社との協力で業界の先行き不安に対応が可能になります。

5.M&Aによる金銭問題の解決、関係者との関係維持

廃業の際に生じる課題として金銭に関する問題を挙げましたが、M&Aにより会社売却を行うことでより多くの金額が手元に残ります。理由は以下の3つです。

  • 事業用資産や土地、在庫商品を時価価格で売却することができます。
  • 営業権[7]が加味され、ケースによっては数億円から数十億円にのぼることもあります。
  • M&Aにより生じる課税は株式譲渡の際の譲渡益に対する20%の課税のみです。

また、譲受企業が個人保証や担保も引き継ぐため安心して引退後の生活を送ることができます。廃業を行う際の2つ目の課題として、関係者に与える影響について述べましたが、M&Aにより会社は存続するため、関係者との関係を維持することができます。取引先との関係維持はもちろんのこと従業員はそのまま引き継がれることがほとんどです。なぜならば中小企業にとって貴重な経営資源である従業員を解雇することは譲受企業にとって大きな損失になるからです。

この記事では廃業により生じる①「金銭に関する問題」②「廃業が関係者に与える影響」について説明しました。その後、M&Aによりこれらの問題を解決できる可能性があると説明しました。経営者は現在の経営のみならず、引退後の生活や関係者に与える影響を考慮に入れた上で早期から事業承継に関して検討を始める必要があるでしょう。

■参考データ

  • [1] 東京商工リサーチ2016年「休廃業・解散企業」動向調査 http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20170119_01.html
  • [2]日本政策金融公庫総合研究所「中小企業の事業承継に関するインターネット調査」2016年
  • [3]帝国データバンク「中小企業者・小規模企業者の廃業に関するアンケート」2013年
  • [4]野村総合研究所「中小企業における事業承継の調査」2014年2月 *複数回答
  • [5]みずほ総合研究所「中小企業の資金調達に関する調査」2015年
  • [6]レフコデータHPより [7]企業が有する信頼、ノウハウ、将来性、立地条件等の無形の資産、価値のこと

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