業界毎の事例

2023/10/03

IT業界専門のM&Aアドバイザーが解説!ベンチャー企業のM&Aが急増している背景と事例10選

IT業界専門のM&Aアドバイザーが解説!ベンチャー企業のM&Aが急増している背景と事例10選

近年、新たなサービスが次々と世の中に登場し、最新のテクノロジーを活用したベンチャー企業の数も増加しています。そのような状況の中、大企業も新規事業を立ち上げたり自社のサービスを強化するために、最先端技術を保有したベンチャー企業を買収する事例(M&A)が増加しています。

M&Aといえば、ヤフーによるZOZOの譲り受けやZホールディングスとLINEの経営統合などが記憶に新しいと思います。
では、ベンチャー企業へのM&Aが増加している背景にはいったい何があるのでしょうか。
本記事では、ベンチャーM&Aが増加している理由と2022年の最新M&A事例を紹介します。また、fundbookに所属するM&Aアドバイザーに今後のM&A動向の展望をインタビューしました。

渡邊 和久
今回話を聞いたM&Aアドバイザー
渡邊 和久
東北大学教育学部卒。株式会社山形銀行へ入行し、中堅中小企業の法人営業に従事。同行営業支援部にて中小企業を対象とした事業承継・M&A 業務を担当する。2018年にfundbookへ入社。業界初のガス・エネルギー専門チームを立ち上げ、当分野の第一人者としてM&A・事業承継を通じ、多くの経営者を成功に導く。
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M&Aとは

M&A(エムアンドエー)とは「Mergers and Acquisitions」(合併と買収)の略で、資本の移動を伴う企業の合併と買収を指した言葉です。

狭義的な意味のM&Aにおいては、企業の「合併」と、株式譲渡、新株引受、第三者割当増資、株式交換などの手段を通じた会社・事業の「買収」を指します。広義的な意味では、事業の多角化などを目的とした資本提携(資本参加、合弁会社設立など)を含む、企業の経営戦略を指す場合もあります。

▷関連記事:M&Aとは?M&Aの目的、手法、メリットと流れ【図解付き】

ベンチャーM&Aが急増している理由

上述の通り、ベンチャー企業によるM&A件数は全体の約3割を占めています。
大企業が積極的にベンチャー企業を買収する理由としては、主に下記の2つがあげられます。

・ベンチャー企業を譲り受けることによる効率的な新規事業の立ち上げ
・ベンチャー企業の技術やノウハウを活用した既存事業の強化

要するに、大企業にとっては効率的に新しい技術やノウハウを獲得したいという意図があります。そのため譲渡企業の従業員数や売上、設立年数に関係なくM&Aが成立するケースが増加しているのです。

専門家からのコメント

大企業としては自社の事業をより強化できそうな事業や独自に創出することが困難な事業があれば、例えベンチャー企業であっても、今後の可能性を見込んで買収(M&A)する傾向があります。
 
大企業に譲渡を検討しているベンチャー企業も増加基調です。事業を拡大・加速させるために資金調達を行いたいものの、そのための交渉に時間を要し本業への専念が困難になるケースも多いためです。
 
そのためM&Aにより大企業の傘下に入り、潤沢な資金力とリソースを駆使して事業に専念する企業が増えているのです。

【2021~22年ベンチャーM&A事例】 ベンチャー企業へのM&A事例10選

KEYHOLDERによるフォースリーからインターネット広告・メディア事業の事業譲受

引用元:https://43s.co.jp/20220513/

株式会社KeyHolderは、株式会社フォースリー(2012年創業東京都目黒区)からインターネット広告・メディア事業の一部を取得することを決めました。
KeyHolderは昨年4月より新規事業としてYoutube等の動画配信プラットフォームを中心としたSNS媒体向けに制作し、戦略的な広告展開を図るデジタル広告事業を開始。これらプラットフォームへの一層の注力と発展について様々な企業との意見交換を行う過程で、インターネット広告事業、インターネットメディア事業、ウェブサイト制作事業等を展開するフォースリーとのも親和性が高さや、今後の機動的な組織再編による事業基盤の構築に向けた貢献度を鑑みて、本M&Aに至りました。

対象事業の直近売上高は28億8000万円。取得価額は未確定です。
取得予定は2022年7月を予定しています。

BUYSELL TECHNOLOGIESによる、ブランドバッグ・時計など中古品事業のフォーナインの子会社化

引用元:https://buysell-technologies.com/

BuySell Technologiesは、ブランドバッグや時計、ジュエリー・貴金属などの中古品事業を手がけるフォーナイン(2016年設立。東京都千代田区。売上高23億4000万円)の全株式を取得し、子会社化することを決めました。
BuySell Technologiesは店舗買取型、ECなどを含む買取・販売の循環を実現する総合リユースサービスを提供しています。

一方、フォーナイン社は、2016 年に設立され、様々な商品の買取りを行う買取店舗「Reuse Shop WAKABA」を展開しており、2022 年3月末現在、フランチャイズ店舗 152 店舗及び直営店舗 19 店舗を展開しております。BuySell Technologiesはグループの買取チャネル、toC 販売及びタイムレスオークションの更なる拡大に加え、リユースプラットフォームの SaaS 化構想の実現の一助となると判断し、基本合意書を締結のうえ、子会社化に向けた検討を開始することとしました。


メドピア株式会社による株式会社クラウドクリニックの子会社化

引用元:https://medpeer.co.jp/

メドピア株式会社は、在宅医療事務のアウトソーシングサービス「クラウドクリニック」を運営するクラウドクリニック(2016年設立、東京都中央区)を株式交換で子会社化することを決めました。

メドピアは、医師が臨床現場で得た知見を共有する、15 万人以上の医師が参加する医師専用のコミュニティサイト「MedPeer」を核に、様々なヘルスケアの社会課題に応えるべく事業活動を推進しています。
一方クラウドクリニックは、在宅医療事務のアウトソーシングサービスを提供している会社で、専門性の高いスタッフによる在宅医療に特化した独自のサービスを強みとしています。
本件によって、高齢者人口の増加に伴い在宅医療のニーズが高まる一方で、医療機関において医師の働き方改革への対応が課題となる中、医師 15 万人以上の医師会員を中心とした医療における多方面の事業運営ノウハウとネットワークを持つ当社と、専門性の高いスタッフと在宅医療に特化した独自のサービスを有するクラウドクリニックが統合することで、より充実した在宅医療関連サービスの開発と提供を見込みます。

株式交換の総額は3億8484万8150円〜4億6650円で、取得予定日は2022年7月1日を予定しています。

マクロミルによるマーケティングコンサル事業のSOUTHの子会社化

引用元:https://www.macromill.com/

マクロミルは、株式会社SOUTHの株式71%を取得し子会社化することを決めました。
株式会社SOUTHは2020年設立のマーケティングコンサルティング事業を営む会社です。
マクロミルは、自身のデータコンサルティング事業とSOUTHのマーケティングコンサルティング事業とに高い親和性を見出し、両社の事業を統合することで、市場での立ち位置を強固にし、事業拡大につなげる見込みです。
尚、子会社化に先立ち、マクロミルのデータコンサルティング事業をSOUTHに承継させる会社分割を行うとのことです。
会社分割と株式取得の予定日は2022年7月1日。子会社化したSOUTHは「エイトハンドレッド」に社名変更するとのことです。

株式会社じげんによる株式会社STRUCTの子会社化

引用元:https://zigexn.co.jp/

株式会社じげんは、建設業界向け人材紹介事業の株式会社Struct(2020年設立。東京都渋谷区)の全株式を取得し子会社化することを決めました。

じげんは、ライフサービスプラットフォーム事業を運営する企業で、今後の方針として短期的にはキャリアドバイザーの人員拡充及び生産性の向上、そして当社のマッチングテクノロジーの活用による集客力の改善に取り組み、中長期的には同社の事業モデル及びノウハウを応用し、需給ギャップの大きいその他人材領域への横展開等を進めることで、主力事業であるVertical HR の更なる業績拡大を掲げています。

本株式取得により、人手不足による人材確保ニーズが高い分野である建設領域において、新たに事業展開が可能となるだけでなく、特定領域に特化することでより業界に根ざした課題解決に可能になると考えており、集客チャネルの最適化に伴うユーザー獲得単価の逓減ならびにオペレーション効率化によって、業績拡大を見込んでいます。

取得価額は非公表。取得日は2022年5月20日です。

クリーク・アンド・リバー社によるANIFTYの子会社化

引用元:https://www.cri.co.jp/

株式会社クリーク・アンド・リバー社は、アニメ・漫画の二次元イラストやキャラクターに特化したNFT(非代替性トークン)プラットフォーム「ANIFTY」を運営するANIFTY(2021年設立。東京都港区)を子会社化することを決めました。

クリーク・アンド・リバー社は、映像、ゲーム、Web、広告・出版、作家等の 18 分野で、プロフェッショナル・エージェンシーを展開する企業です。一方、ANIFTY は、東京大学ブロックチェーン学生起業家支援プログラムに採択され、カナダ・トロント大学発ブロックチェーンソフトウェアコンサルティング会社の技術支援による、二次元イラストやキャラクターに特化した NFT*プラットフォーム「ANIFTY」を運営し、世界に誇る日本のアニメや漫画の発展を目指すスタートアップ企業です。

本件により、クリーク・アンド・リバー社は、ライツマネジメント事業の強化だけでなく、日本最大級の当社のコンテンツ開発チーム「C&R Creative Studios」との連携によるコンテンツの世界発信等、クリエイティブ分野におけるシナジーによって、グループのミッションである「プロフェッショナルの生涯価値の向上」の実現に邁進してまいります。

取得価額は非公表。取得完了予定日は2022年5月24日です。

OAKキャピタルによるユニヴァ・ジャイロンの子会社化

引用元:https://www.oakcapital.jp/

Oakキャピタル株式会社は、サイト改善・運営支援などのデジタルマーケティングツールを提供するユニヴァ・ジャイロン(2020年設立。東京都港区)の株式86%を取得し、子会社化することを決議しました。

Oakキャピタルは2021年12月に決済に強みを持つユニヴァ・ペイキャストを株式交換により今年6月に子会社化すると発表しましたが、コロナ禍の収束の遅れからインバウンド関連の決済収益の回復までになお時間を要すると判断し、子会社化の時期を延長するとともに、子会社化の是非についても再検討することにしました。一方、ユニヴァ・ペイキャスト傘下のユニヴァ・ジャイロンにおいては、サイト改善・運営支援ツール「Gyro-n」などのデジタルマーケティングツールを主力とし、SaaS型収益モデルとして2万以上のWebサイトに提供実績を持つことから、ユニヴァ・ジャイロンを先行して子会社として取り込む予定とのことです。

取得価額は未確定、取得予定日は2022年5月31日を予定しています。

米ペイパルによるペイディの子会社化

引用元:https://corp.paidy.com/news/article/4FfOxGFNaCtZaRse4XK7sY

2021年9月7日、カリフォルニア州サンノゼ/PRNewswire/– PayPal Holdings, Inc.(NASDAQ:PYPL)は、あと払いサービス「ペイディ」を提供している株式会社Paidyを3,000億円で買収することを発表しました。
ペイパルは、世界第3位のEコマース市場である日本での越境EC事業に加えて、今回の買収により、国内決済市場で機能やサービスを拡充することで存在感をさらに高めていきます。
Paidyは「3回あと払い」など革新的なサービスをスピーディに開発することで、アカウント数は600万を超え、主要なグローバルブランドやECモールとの戦略的パートナーシップを構築してきました。さらには、「どこでもペイディ」の提供開始によってペイパル、その他のデジタルウォレットやQR決済との連携を実現し、自社のプラットフォームを超えてオンラインおよび実店舗で利用できる加盟店を拡大しています。
買収当時、Paidyは赤字を計上していたとされていますが、3,300億円という、国内スタートアップで最高価額の金額でM&Aが実現しました。

マネーフォワードによるNEXT SOLUTIONの子会社化

引用元:https://moneyforward.com/

株式会社マネーフォワードは、保険代理店業を営む株式会社Next Solution(2014年設立)の発行するすべての株式を取得し、完全子会社化しました。
Next Solutionは全国に 7 つの拠点を有し、複数の生命保険会社・損害保険会社から保険商品の販売を受託する乗合保険代理店であり、顧客一人ひとりのニーズと家計の状況に合うライフプランを提案し、最適な保険商品を提供することを強みとしています。

一方、マネーフォワードは、中長期的な株主価値及び企業価値の向上に向け、「マネーフォワード ME」や金融関連サービスなどの提供を通じて、個人のお金の見える化から家計改善に向けたアクションをサポートし、ユーザーの課題解決とサービスラインナップの拡充に取り組んでいます。
本子会社化により、オンラインとオフラインを併用したサービス提供により、ユーザーの課題解決を推進してまいります。また、持つ家計・資産データと、Next Solutionがコンサルティングを通じて蓄積する情報を融合することにより、ユーザーの利便性向上を目指すとともに、Next Solutionを通じて取り扱う様々なサービスの提案を実施することにより、さらなる提供価値の向上を目指すとのことです。 

ケイティケイによるイコリスの子会社化

引用元:https://www.ktk.gr.jp/

ケイティケイ株式会社は、EC事業を営む株式会社イコリス(2020年設立)の全株式を取得し、同社を子会社化しました。
イコリスは、2020 年に創業したスタートアップ企業で、アルゴリズム解析・データ分析・デザイン・広告運用等、デジタルマーケティングを活用した EC 事業を展開しています。

ケイティケイは、リユース・リサイクルによるサステナブル商品をはじめとしたオフィスサプライと IT ソリューションを提供する会社です。

ケイティケイは中期経営計画として掲げた「新たな販売手法・チャネル開拓」「資本提携機会の探索」の実現を目指す中、DX でオフィスの未来を変えるという同じ志を持つ、イコリスとの資本提携に至りました。

イコリスが現在展開している EC 事業について、グループの調達力と信用力を活かして、現状のサプリメントから商品ラインナップを拡充し、さらなる成長を目指すだけでなく、2022 年4月1日付で当社内に 「デジタルマーケティング本部」を新設し、連携してビジネスモデルの変革を目指すとのことです。

取得価額は非公表です。取得日は2022年3月31日です。

専門家からのコメント

ベンチャー企業がM&Aをするという事例は今後増えていくでしょう。
 
起業家としての成功の形は今までIPOが主流でした。しかしながら海外では既に、IPOに代わる成功の形としてM&Aが注目されています。ご存知の通り、IPOを行い上場できる会社は非常に少数であり、IPOによるイグジットは決して容易くはありません。
 
日本の企業は421万社あるのに対して、上場企業は 3,759社と、全体のわずか0.09%です。また、日本取引所グループによると昨年のIPO承認件数はわずか59件でしたので、上場審査基準のハードルの高さがわかると思います。
 
もちろん、IPOと比べてM&Aが簡単というわけではないですが、ある程度の利益と技術力、マーケットの環境が揃えば決して可能性が低いわけではありません。自社の現状を把握した上で、今後の成長戦略において「いつM&Aをするのが最適なのか」、機会をつくって考えておくことも大事ではないでしょうか。

まとめ

今後、大企業による最先端の技術を保有したベンチャー企業のM&Aは、ますます身近になるかもしれません。普段の生活をより便利にしてくれるサービスが、M&Aによってどんどん生まれる可能性もあります。
もしかしたら、あなたの所有している技術や開発したサービスが、大企業の目に留まるかもしれません。

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