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2023/09/27

中小企業の後継者問題はM&Aで解決できるか

中小企業の後継者問題はM&Aで解決できるか

日本では中小企業・小規模事業者の後継者不足が深刻な問題になっています。
経営者の後継者が不在の場合、事業が廃業してしまう可能性もあります。

2025年には、70歳以上の中小企業・小規模事業者の経営者は約245万になり、そのうちの半数である127万人が後継者が未定とされています。このため、現状を放置すると中小企業・小規模事業者の廃業が急増し、2025年頃までの10年間の累計で約650万人の雇用と約22兆円のGDPが失われると発表しています。

そこでこの記事では、中小企業・小規模事業者の後継者問題について、現役のM&Aアドバイザーが解説していきます。後継者不足に危機感を抱いている方は、ぜひ参考にしてください。

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後継者不足とは?

後継者不足とは、企業の経営権の跡継ぎが見つからない状態です。
後継者不足になると、たとえ利益が出ていても企業は存続することができずに廃業する場合もあります。

日本の 後継者不足の現状は深刻です。詳しくは次の章で解説しています。

後継者不足の現状

現在、ありとあらゆる業界において後継者不足問題が顕在化しています。帝国データバンクの動向調査(2020年)によると、国内企業の65.1%が後継者不在であり、60歳以上の経営者のうち50%超が将来的な廃業を予定しています。
このうち「後継者難」を理由とする廃業が全体の約3割を占めています。

※出典:帝国データバンク 全国企業「後継者不在率」動向調査(2020 年)

また経営者の平均年齢は年々上昇しており、帝国データバンクの調べでは2021年1月時点で60.1歳となり、1990年からの調査開始以降初の「60歳超」となりました。

中小企業庁の調査では、平均引退年齢は68歳で高止まりしています。従って、後継者が見つからなければ、数年のうちに廃業する企業は増加していくと見られます。

※出典:帝国データバンク 全国社長年齢分析

後継者不足になった背景

後継者不足のイメージ

このような状況が生まれる背景には複数の社会的要因が絡み合っています。

▷後継者不足の要因 ①:人口減少による経営環境の悪化

要因として、人口減少による経営環境の悪化が挙げられます。

マーケットの規模と人口は密接にリンクしています。ご存知の通り、日本では少子高齢化が進み、人口は減っていく一方で、2050年までには1億人を切るとされています。この流れの中で、中小企業が利益を上げていくことの難しさは容易に想像がつきます。
 
また、グローバル化の影響によりコスト面で大きなアドバンテージを持っているアジア系企業が日本に進出し、日系企業のみならず海外資本の企業にも競り勝っていかなければいけない状況となっています。
これまでの時代と比較するとビジネス環境は大幅に悪化していると言わざるをえません。上記のような時代の流れを見ていると、自社を継ぎたいと考える後継者は今後も減少していくことは必至です。
オーナーの中には、経営難が予想されるこのご時勢で会社を子供に引き継がせ、辛い思いをしてほしくないと考えているオーナーも少なくありません。

▷後継者不足の要因 ②:価値観の多様化

また、価値観の多様化も挙げられます。

昔と比べて生活水準が上昇し暮らしが豊かになった事で、価値観が大幅に変化し生きていく上での選択肢が圧倒的に増えました。

例えば、夫婦共働きで子供を生まない家庭もあれば、結婚せず意欲的に仕事をこなす女性もいます。昔の当たり前が今の当たり前ではなくなった21世紀において、親の会社を子供が継ぐということも当たり前ではなくなってきています。ご子息には、自分が望んだ人生を歩んでほしいと考えるオーナーも増えており、事業承継を強制することが減る傾向にあります。

後継者問題が起こる原因

後継者問題が起こる原因に、以下のものがあります。

・原因 1.少子高齢化
・原因 2.経営の将来性がない
・原因 3.継ぐ意思のある人材がいない
・原因 4.早期に対策できなかった

それぞれ解説していきます。

▷原因1.少子高齢化

少子高齢化によって、子供の数が減り、高齢者が増えることで後継者問題が起こります。

2021年の総務省統計局の調査では、高齢者人口は3,640万人と過去最多で、総人口に占める高齢者の割合は29.1%にもなっています。

▷原因2.経営の将来性がない

経営の将来性がないケースも原因になります。

先述した通り、事業環境は厳しいものになってきています。このような状況では、素質が無い人を後継者にした場合にはたちまち経営難に陥ってしまうでしょう。そして、倒産ということになれば、子供に莫大な借金が残ってしまいます。このようなことを考えると、子供に継がせたくないと社長が考えてもおかしくはないでしょう。

実際、事業環境の厳しさを理由に事業承継を諦めた経営者は多いようです。中小企業庁の調査によると、事業承継を検討したが断念した理由の55%が「将来の業績悪化への懸念」となっています。子供への負担を考え、事業承継を諦めるケースは半数以上も占めているのです。

▷原因3.継ぐ意思のある人材がいない

後継者問題が生じる原因の1つが、社長の子供が会社を継がないというケースです。
自分の会社を子供が継いでくれると期待していたが、子供には継ぐ意思がないというケースは多くあるようです。なぜ子供が後継者になろうとしないのでしょうか。

1つには、子供が企業に勤めている、あるいは医者や弁護士などの専門職に就いており、仕事を辞めたくないというパターンがあります。創業者には優秀な方が多く、また子供の教育にお金をかけている人も多いので、子供は一流大学を出ていてやりたい仕事をしているというケースが多く見られます。
 
また、子供が自身の経営者としての資質や能力が不足していると感じて継がないパターンもあります。昨今は、経営環境がますます悪化しています。
経済停滞や地域の人口減少により、収益を悪化させている中小企業は数多くあります。さらには、技術革新やグローバル化で変化のスピードはますます速くなっています。このような環境の中で経営者になることへの不安を感じるのは仕方が無いと言えます。

自分の子供に継いでもらうという選択肢が無理だった場合、社員に継がせるという選択をすることもできます。
しかし、この場合にも多くの問題点があります。まずは、経営者にふさわしい人材がいない場合です。社員や役員として優秀であったとしても、経営者にふさわしいとは限りません。経営者になるには財務の知識や経営の知識、またリーダーシップなどといった人間性など様々な能力が要求されます。

仮に経営者の素質を持った社員がいたとしても、実際に継がせるには数多くのハードルを越えなければいけません。

まずは、株式に関する問題です。例えば、時価総額5億円の会社を譲渡するには、買い手には5億円の資金が必要となります。継がせたい社員がいた場合、会社の株式を買えるだけの資金を持っていなければなりません。
また、会社の負債を背負う必要もあります。会社の資産だけで担保が足りない場合は、社長が自らの資産を担保とすることが一般的です。

さらに、個人保証をする場合には、自己破産にいたる可能性もあります。以上のことを考えた場合、社員に継がせるには大きな負担をかけることになります。株式を買えるだけの資金や、担保出来るだけの資産を持っている必要があります。そして、そのような条件が揃い、社員に継ぐ意思があったとしても、その社員の家族が反対をするということも考えられます。社員への事業承継は難しいものなのです。

▷原因4.早期に対策できなかった

早期に対策ができなかった場合もあります。
後継者問題には、後継者の育成や社内の従業員の理解など時間がかかる場合が多いです。

本業の忙しさから早期に対策しなかったため、後継者が不在のまま経営者が亡くなり、手遅れとなるケースもあります。

後継者不足が起きている業種

後継者不足が起きている業種には、以下のものがあります。

・業種1.農業・漁業
・業種2.伝統工芸
・業種3.お寺

それぞれ解説していきます。

▷後継者不足が見られる業種 1:農業・漁業

農業・漁業は、後継者不足が起きている業種です。
特に農業は、就労人口のうち65歳以上の割合が6割以上というデータを農林水産省が発表しています。
 
農業や漁業は環境によって売上が左右されるため、事業に不安を感じる人も多いと予想されます。

▷後継者不足が起きている業種 2:伝統工芸

伝統工芸も後継者不足が起きている業種です。技術の発展により、低コストで大量生産ができるようになったため、伝統工芸は衰退をしています。

消費者は、安いものや新しいものを買うことが一般的なため、伝統工芸の事業は、将来の売上の見通しを立てづらい状況です。そのためか、伝統工芸の道を目指す人は減っているようです。

▷後継者不足が起きている業種 3:お寺

文化庁統計の発表によると2020年の時点で、日本には76,000寺以上のお寺が存在しています。

日本フランチャイズチェーン協会が発表する2022年1月時点のコンビニの数が約55,000店舗なので、お寺はコンビニよりも数が多いです。しかし、地方の人口が減っている影響からお寺も衰退し、後継者問題に悩まされているケースが見られます。

後継者不足を解決する方法

後継者不足を解消し成功するイメージ

オーナーが引退する際、会社の処遇に関する選択肢は3つあります。

・解決策1.後継者を育成する
・解決策2.自身のネットワーク以外で後継者を探す
・解決策3.M&Aを行う

それぞれ解説していきます。

▷後継者不足の解決策 1:後継者を育成する

後継者を育成するのは解約策の一つです。親族または社員に承継は事業承継を考えた際に、真っ先に思い浮かぶ選択肢かと思います。

後継者を育成することで、後継者問題を解決できます。

ただし、子供には荷が重過ぎる/経営者には向かないというケースもあります。

また、社員を後継者にするのは、中小企業の場合、あまり現実的とは言えません。
ネックとなる点としては大きく分けて2つあります。「会社を時価で買うだけの資金力があるか」と「個人保証をする覚悟があるか」という点です。
事業承継の際には会社を時価で譲渡する必要があり、創業年数にもよりますが30年~40年経っているとすると時価は数千万~数億円単位でしょう。これほどの資金を持ち合わせている社員はなかなかいません。

さらに、金融機関から借入する際に会社の資産では担保が足りない場合、社長は自宅等の担保を提供し個人保証を結びます。承継の際にはこの契約も移行する必要があるので、倒産の場合には個人資産の処分のみならず自己破産の可能性が付きまといます。会社を時価で購入できる資産を持ち、なおかつ、個人保証をする覚悟がある社員は少ないでしょう。
また、後継者候補が経営者としての能力や経験を身につけるまで育成する必要があるため、時間を要する解決策です。

▷後継者不足の解決策 2:自身のネットワーク以外で後継者を探す

自身のネットワーク以外で後継者を探す方法です。

2011年から国が全国に設置している事業引継ぎ支援センターや金融機関で後継者の候補者を募集できます。

ただし、日本全体が後継者不足という状態のため、優秀な後継者と出会える可能性が高いとは言えないでしょう。

▷後継者不足の解決策 3:M&Aを行う

解決策としてはM&Aがあります。

こちらは企業同士の合併や事業・株式の譲渡を指します。M&Aによって会社を譲渡するので譲受企業から経営陣を迎え、これまで通り会社を存続させる事ができます。
後継者不足による跡取り問題に悩まされる必要がなくなり、なおかつ創業者利潤を清算時よりも多く得ることができます。

近年では急激に高まっているM&Aのニーズに応えるために、金融機関のM&A部門が非常に充実してきました。
独自のネットワーク、スキルを有した中小企業専門M&A仲介会社も増えており、満足のいくM&Aを行いやすい環境が整備されてきています。そのため、納得のいく企業とM&Aをし、理想の形でリタイアメントを迎えることが可能となっているのです。
 
M&Aの全体像は、以下の記事で解説しています。
▷関連記事:M&Aとは?メリットや手法、流れなど成功するための全知識を解説

M&Aにおける仲介会社の役割は、こちらの記事でまとめています。
▷関連記事:中小企業のM&A 企業の合併・買収をアシストする仲介会社の役割とは

M&Aで人口減少にどう対応できるのかは、次の記事を参考にしてください。
▷関連記事:M&Aで人口減少に対応する

まとめ

後継者不足は、日本の企業が抱える深刻な問題です。

企業に後継者がいなければ、最悪の場合、廃業となり、売上や従業員の雇用が失われてしまいます。
親族内や社内に後継者が不在でもM&Aによって、後継者不足の問題を解決できる可能性があります。とはいえ、M&Aには様々な専門知識が必要なため、自社だけで行うのは難易度が高いです。

そのため、M&Aの専門家のサポートを受けるのが賢明です。
fundbookでは、豊富な経験と知識を持ったM&Aアドバイザーが相談に乗らせて頂きます。初回の相談料は無料です。

自社の後継者が不在に困っている方や後継者が不在の会社をM&Aしたいと考えている方は、この機会にお問い合わせをご検討されてみてはいかがでしょうか。

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