近年、M&Aの手法において組織再編のスキームの1つとして注目を集めているのが株式交換です。M&Aと聞くと、株式を譲受企業に譲渡することで会社の経営権を移動させる株式譲渡をイメージする方も多いかもしれません。しかし近年では、企業の国際競争力の強化、経営の合理化・効率化などを目指して、株式交換を行うといったニュースも見かけるようになりました。
 
今回は、組織再編の手法として混同されることも多い株式交換と株式移転を比較しながら、株式交換のメリット・デメリット、株式交換比率の計算方法、株式交換における株価の変動と注意点について紹介します。なお、本記事において会社は株式会社を指すものとします。

 

株式交換と株式移転の位置づけ

株式交換・株式移転は、ともに既存の株式会社の株式を、親会社となる会社がすべて取得することで、完全な親子会社関係を定めるための手段として行われます。

株式交換とは

株式交換とは、会社の発行済株式のすべてを、既存の株式会社または合同会社に取得させることにより、完全な親子会社関係を創設する手法です。
 
株式交換は、株式移転と共に、1999年(平成11年)の商法改正で導入されました。これにより、会社は株式を買い取るための十分な資金を持たなくとも、発行済株式を対価として簡易かつ迅速に組織再編を行えるようになりました。旧商法では株式交換の対価は株式に限定されていました。しかし、現在は商法改正に伴い、現金、社債、新株予約券等の親会社の証券や、その他の会社の株式も交付が可能となっています。(平成30年10月現在)

株式移転との違い

株式移転とは、既に存在する会社の発行済株式のすべてを、新しく設立する会社に対し、移転させることです。株式交換との違いは下記の通りです。

株式交換と株式移転の比較

手法 株式交換 株式移転
親会社 既存会社 新設会社
主な利用目的 ・グループ内子会社の完全子会社化
・企業譲受
・迅速な対応が難しく、譲受には不適
・主にホールディングス設立などに利用される
効力発生時 株式交換契約書で定めた効力発生日 新設した会社の成立の日

 

・株式交換の場合は、完全子会社となる会社の発行済株式の全てを、親会社となる既存の会社または合同会社が譲り受けます。一方、株式移転の場合は、子会社となる既存会社の発行済の全ての株式について、親会社となる会社を新たに設立し、移転します。
 
・株式交換は、組織再編において完全子会社でない会社の株式を100%保有し、完全親子会社関係にすることで、主にグループ連携を強化するために行われます。一方、株式移転の場合は、主に持株会社(ホールディングスカンパニー)を設立するために行われます。
 
・株式交換の効力は、「株式交換契約書で定めた効力発生日」に生じます。一方、株式移転の効力は、「新設した会社の成立の日」が効力の発生日となります。

関連記事:▷株式交換と株式移転の違い
 

株式交換のメリット・デメリット

株式交換のメリット・デメリットを説明します。

メリット1:株式を売却することにより、利益を得られる

親会社となる会社が上場企業で交換の対価が親会社の株式である場合、子会社の株主は保有する株式の交換の対価として親会社の株式を取得することにより、株式の値上がり値の期待ができます。株式を取得し、値上がりしたところで株を売却することにより、利益を得られます。

メリット2:親会社の経営に参画ができる

株式交換後の株式の持分比率によっては、親会社の経営に参画ができます。

デメリット1:価格変動のリスク

親会社が上場企業の場合、株式交換の対価として取得した親会社株価が変動することで取得した株式の価値が下がるリスクもあります。親会社が優良な企業であったり業績向上を期待できるのであれば、株価の上昇を期待できますが、逆に業績が悪化してしまった場合は株価が下落する可能性もあります。

デメリット2:換金が困難

親会社が未上場企業または非公開会社の場合、交換の対価として取得した親会社株式に流動性がないため、子会社の株主は現金化が難しくなります。

株式交換比率とその計算方法について

株式交換比率とは、子会社の株主が保有している株式に対して、親会社の株式を何株受け取れるかを示す比率です。株式交換比率は、「親会社の1株あたりの価値:子会社の1株あたりの価値」で表します。株主が保有している株式を譲渡し、親会社から対価を受け取る際、この株式交換比率によって対価として得られる株式の数が決まるのです。
 
例えば、親会社の株式1株に対して子会社の株式2株で株式が交換される場合、親会社と子会社の株式比率は1:2となります。具体的には、株主が所持している200株を譲渡する代わりに、子会社の株主は親会社の株を100株譲り受けることになります。
 
一般的に株式交換比率は、親会社と子会社の企業価値の比較をもとに決定します。親会社に子会社化された場合、株式交換比率に従い親会社の株式が交付されます。そのため、株式交換比率は、親会社および子会社の双方の「企業価値」を正確に反映した公正な計算に基づくことが求められます。

企業価値算定の方法

上場企業であれば、既に株式市場で株価が公表されていますが、未上場企業および株式非公開の会社の場合、会社の株式には市場価格がなく、客観的な適正価格がわかりません。そのため株式の価値を算出する必要がありますが、会社の環境によって株価算定のための適切な方法は異なります。
 
一般的に企業価値は、コストアプローチ、マーケットアプローチ、インカムアプローチの3つの手法をベースとして求めます。企業価値の算出には専門知識を必要とするため、不明な点がある場合には専門のM&Aアドバイザーや税理士に相談しましょう。

関連記事:▷企業価値の算出方法とは

株式交換における注意点-株価の変動

最後に、株式交換を行い対価として株式を受け取るケースにおいての注意すべき点として、株式交換におけるデメリットとしても紹介しましたが、株価の変動について説明します。
 
親会社となる譲受企業の業績が良好だと、株式市場では投資家の期待値が上がり、株価は上昇します。その反面、業績の悪化などにより投資家の期待値が下がると、株価が下落する可能性があります。会社に対する期待値の判断は投資家によって異なりますが、一般的には会社のビジネスプランや財務指標、業界全体の成長率などをもとに判断します。つまり、親会社の業績次第で株式交換後に取得した株価に変動が生じます。自社株式との交換の対価として取得した株式価格の変動リスクに関しては注意が必要です。

まとめ

株式交換はM&Aにおいて、組織再編の手法の1つとして行われ、既に存在する株式会社に自社の株式を譲渡することにより、親会社と子会社のグループ連携を強化できます。株式交換を検討される方は、この記事で紹介したメリット・デメリット、株式交換比率や株価の変動などの知識をしっかり身につけ、スムーズに手続きを進められるようにしましょう。株式交換を行う場合は、専門的な知識が必要となります。そのため、不明な点があれば専門のM&Aアドバイザーに相談することをオススメします。