M&Aで人口減少に対応する

カテゴリ:M&Aの基礎知識

2017/10/11

1.日本の人口の減少について

昨今、日本の人口減少が問題になっています。ピーク時には4.3以上あった合計特殊出生率[1]が、2015年には1.46にまで下がっています[2]。人口維持に必要な合計特殊出生率は2.07と言われており[3]、現在の水準のままでは人口が減っていくことは明らかです。実際、平成27年度の国勢調査では、調査を始めて以来初の人口減が観測されました[4]。今の傾向が続く限り、日本の人口減少にはますます拍車がかかるでしょう。試算によって数値は異なりますが、2053年には人口は1億人を下回るとされています[5]。人口減少は市場の縮小を意味するので、日本におけるビジネス環境の悪化は避けられません。
これをさらに大きな問題にしているのが、少子高齢化です。総人口に対する65歳以上の高齢者の割合は2030年には30%を超えると見込まれています。そして同時に、生産年齢人口(15~64歳の労働可能人口)は減少していきます。2010年には8000万人以上だった生産年齢人口は2030年に6700万人ほどになり、生産年齢人口率は63.8%(2010年)から58.1%(2030年)に下がるとされています。つまり、そもそも働き手が大きく減少するのです。全体的な人口が減り、なおかつ労働者も減ることで、供給量も需要量も減少することになります。人口減は日本経済に大きな打撃を与えると考えられます。

2.人口減少によるビジネスへの影響

人口減少によって起きるビジネスへの問題を詳しく説明していきます。地域別にみると、この人口減少は、特に地方への影響が大きいと考えられます。地方は元々人口が少ないので、更に人口減少が起きれば商売を行うための市場自体がなくなるでしょう。そして現在、すでに人口減少による問題が発生しています。例えば、百貨店が地方からの撤退を進めています。百貨店が利益を出すために必要な人口よりも、地域の人口が少なくなってしまったために、経営が成り立たなくなっているのです。
また世代別にみると、生産年齢人口の減少で自然とその層を対象としたビジネスも難しくなるため若者~中年層を対象にしたビジネスも難しくなります。高齢者は増えるので、高齢者ビジネスは成り立ちそうに見えます。しかし今後の日本社会への不安から、高齢者層も消費を控えるようになると考えられます。高齢者を対象としたビジネスも簡単ではないでしょう。
以上のような人口減少による問題に対処する戦略として、2種類のM&Aがあります。1つは、新たなマーケットを求めて他の地域や商品に展開を図るという戦略です。もう1つは、内製化や合理化を進めることで、売上が減少しても収益を獲得できるようにする戦略です。前者を目的としたM&Aを「水平統合」と言い、後者を目的としたM&Aを「垂直統合」と言います。
昨今、中小企業によるM&Aが増えている一因も、人口減少へ対応するためです。中小企業のM&Aを専門に扱っている日本M&Aセンターの分林会長は、「これからの中小企業はグループ企業にならないと海外市場にも出ていけない。1社単独で生き残れない。これが日本の時代の流れで、M&A市場はますます拡大する」と語っています。これを示すように同社の扱った案件の数も増加しているようです[6]。
以下では、水平統合と垂直統合それぞれの例を紹介します。

3.水平統合

水平統合をより正確に表すと、同一業種の他社とのM&Aもしくはアライアンスを行うことを指します [7]。

人口減少対策の1つとして水平統合型のM&Aを行なっている業界の1つに食品業界があります。食品業界では、人口減少による市場の縮小、原材料の価格高騰、食の安全を担保するためのコスト増など、外食環境の厳しさが増してきています。国内においては、2016年4月に食肉加工メーカー大手で当時業界2位だった伊藤ハムと業界7位だった米久による経営統合がされました。大手による中小企業の買収や、中小企業間の買収も盛んに行われています[8]。大手食品メーカーは、海外進出も行っています。例えば昨年、味の素がトルコの食品会社を買収した事例があります。

食品業界のように人口減少による需要減が起きている業界には、水平統合型のM&Aをすると以下のようなメリットがあります。まず売り手側のメリットには、有力なグループの傘下で、安定的・効率的な事業経営ができるというものがあります。市場が縮小する業界では自然と競争が激しくなるので、その環境で中小企業が単独で生き残ることは難しいでしょう。他のM&Aと同様に、ハッピーリタイアが出来るなどのメリットもあります。
買い手側にとってのメリットは、他地域への展開や新商品の開発のコストを節約できることが挙げられます。市場縮小には、他地域への進出や新商品の販売で縮小分を埋め合わせることで対処できます。しかし、これには土地の取得や取引先の開拓などのコストがかかります。新商品の販売にしても開発に時間がかかりますし、開発できたとしても実際に売れるかはわかりません。M&Aで他企業を買収することで、こうしたコストを節約できるのです。

4.垂直統合

垂直統合とは、自社の仕入先、あるいは販売先とのM&Aやアライアンスを行うことで、事業領域の拡張を行うことを指します[9]。

1つには、川上産業に進出して材料の調達や工場での生産を内部で行い、コストダウンを図るタイプがあります。また、メーカーが川下産業を買収し、販売体制を確保するタイプのM&Aもあります。どちらも、バリューチェーンの機能強化による競争優位性の確保を目的としています。

垂直統合の例には、小売店のプライベートブランドの生産が挙げられます。最近では、コンビニやイオンなどの小売店各社がオリジナルのプライベートブランド製品を多く販売しています。小売業者や卸売業者が直接管理、生産をすることでコストを抑えているのです。需要の減少に対し垂直統合によるコストカットで対応している例と言えます。ユニクロなどのアパレル業界もSPAという方式で垂直統合を進めています。売り手にとってのメリットは、他のM&Aと共通しているものとなります。事業の存続や後継者問題の解消などが挙げられるでしょう。

5.人口減少への対応は急務

人口減少は、すべての業界に影響します。今後は、働き手も買い手もどんどん減少していきます。人口減少への対応策を考えなければ、大企業であっても生き残りは難しいでしょう。
それを見越してか、昨今海外企業を買収する日本企業が増えてきています。中には、サントリーやJTのように、1兆円を超える規模の買収の事例もあります。それだけ生き残りに必死だということでしょう。冒頭で述べた通り、2053年には日本の人口は1億を割ると言われています。「あと30年もある」と考えていると、あっという間に業界再編に取り残されてしまいます。事業存続を目指すには、早急に戦略を練る必要があります。

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