規制緩和がもたらす競争の激化と業界再編

カテゴリ:M&Aの基礎知識

2017/10/04

1.競争の激化によるM&Aの増加と業界再編

企業間の競争が激しい業界では、M&Aが多く行われます。中小企業は単独で競争に勝ち残ることが厳しい場合、他社との統合や大手企業の傘下に入ることで生き残りを目指します。一方で大手企業も、経営資源を集中し、スケールメリットと重複部門の合理化によって競争力を高め、他社との競争を勝ち抜こうと考える経営者が増えます。この場合のM&Aは、経営戦略の一つとして用いられています。
競争の激化を起こす要因の一つに、規制緩和が挙げられます。規制緩和により異業種の参入や価格競争が発生し、企業同士の生き残りを目指した競争が発生するのです。この環境下では単独での生き残りが難しくなり、大企業だけでなく中小企業においてもM&Aが頻繁に行われるようになります。今回は、規制緩和を1つの原因として、今まさに業界再編の最中にある薬局業界を例として紹介します。

2.薬局業界の業界再編の現状

薬局業界では今、M&Aが頻繁に行われています。その数は、年間1000件ほどになるとも言われています[1]。薬局業界でM&Aが活発になったのは2013年ごろからでした。

この年にはドラッグストア大手の富士薬品が調剤薬局の上場企業だったオストジャパングループ(北海道で19店舗を展開)を買収しました。また、メディカルシステムネットワーク(北海道)とトータル・メディカルサービス(福岡を中心に35店舗を展開)の調剤薬局の上場企業同士のM&Aも行われ、これがきっかけとなって、その後、10~20店舗のM&Aが立て続けに成立したことで再編が加速していきました[2]。

しかし、上位10社で占めるシェアは14%ほどとまだ小さなものでしかありません。店舗の多くは、中小企業となっています。業界再編は、上位4社で90%のシェアとなるまで進むとも言われています[3]。このことを考慮すると、今後も再編は続いていくと見込まれます。

3.なぜ薬局業界の業界再編が活発化しているか

ここでは、薬局業界の現状を整理します。調剤薬局は医薬分業[4]に加え、高齢化の進展で需要の高まりが見られています。ここ10年で調剤医療費は6兆円から7.8兆円に、また、調剤薬局数も約51,000店から約58,000店に増加しています[5]。店舗数の増加により、市場は成長期から成熟期に入ろうとしています。
一方で、事業環境を厳しくする要因も生まれています。要因は、大きく分けて、医療費削減政策による収益減、薬剤師不足、大手・異業種の参入による競争の激化の3つに分けられます。以下では、大手・異業種の参入による競争の激化について詳しく説明していきます。
私たちが薬を買えるのは薬局やドラッグストアだけではありません。コンビニエンスストアやスーパーなどでも買うことができます。薬局以外での薬の販売は、2009年の薬事法改正によって可能になりました。この改正によって、一部の薬品については店舗に薬剤師が不在でも販売することが可能になりました。この規制緩和により、異業種の参入が続いています。たとえば、イオングループが大手ドラッグストアのウエルシアグループを2014年に買収しました。ドラッグストアに関しても、先述の富士薬品のように、調剤薬局を買収する企業が増えてきています。また、大手調剤薬局同士のM&Aも行われています。規模拡大を図る企業が増え、業界再編が加速しています。
この動きは、特に中小規模の薬局に大きな打撃を与えました。薬局業界は大手のシェアが少なく、ほとんどが中小規模の薬局です。そのため、異業種の大手の進出や、それに対応した大手薬局会社の拡大による競争の激化は中小薬局には大きな負担となりました。さらに、薬事法改正はその後も続き、ネットでの販売の開始[6]などで事業環境はいっそう悪化しています。中小規模の薬局の生き残りはますます難しくなるでしょう。

4.M&Aによるメリット

以上のような状況において、薬局業界でのM&Aは売り手にとっても買い手にとっても双方にメリットがあるものになっています。
まず売り手にとってのメリットは3つあります[7]。

1つ目は大手企業の傘下で、安定的・効率的な事業経営ができることです。特に、調剤師不足の解消・調達コストの削減・システム導入によるオペレーションコストの低下などが効果として挙げられます。業界再編の中で単独で生き残りを図ることには、大きな負担と不安が付きまといます。大手の傘下に入ることは、中小規模の薬局にとって安心して経営を行うことにつながります。

2つ目は創業者利益を獲得できることです。M&Aによって会社を売却することで、その利益の一部は経営者の手元に入ることになります。もし、会社を売却せずに単独で経営を進めた場合、業界再編の波に取り残されて会社が潰れてしまう可能性もあります。その場合には、多額の借金を背負うことになるでしょう。そうなる前に売却することで、多額の利益を手にすることが出来ます。

3つ目は、薬局店舗が存続することです。M&Aによって、薬局が消滅するわけではありません。患者様や、取引先との関係は継続したまま他社に譲渡することになります。決して、薬局の関係者様に迷惑をかけることにはなりません。

一方、買い手にとってもメリットがあります。1つ目は、スケールメリットがあります。競争に生き残る方法の一つに、営業地域の拡大によるスケールメリットを活かした競争力強化があります。具体的なスケールメリットには、薬品の調達原価の減少などが挙げられます。2つ目として、新規出店時のコスト削減があります。新規に薬局を建てる場合、様々な費用がかかります。土地の取得や店舗の設立に加え、薬剤師の確保などが必要になります。一方で、M&Aで店舗を取得した場合は、購入した会社の薬剤師や、処方元医療機関との関係を引き継いで拡大が出来るため、時間も費用も節約できます。

以上のように、M&Aによるメリットは、買い手と売り手双方に存在しています。だからこそ、現在薬局業界ではM&Aによる業界再編が起こっています。

5.薬局業界の今後

では、薬局業界の再編は今後どうなるでしょうか。調剤薬局業界でのM&Aによる再編は、今後も続いていくと考えられます。大手によるシェアは依然として少なく、まだまだ拡大する余地はあります。さらに、事業環境は今後も悪化していくと見られます。政府は医療費の増加を大きな問題としており、医療費削減の方針は今後も続いていくでしょう。さらに、政府は2018年以降薬価を毎年改定するという方針を打ち出しました[8]。これは、薬価の低下をもたらすと考えられています。以上のような事業環境において、大手によるスケールメリットを狙ったM&Aの増加と、経営が困難になる中小薬局の増加は今後も見られるでしょう。

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