インタビュー

2017年、譲渡成立

譲受企業にノウハウをもたらす、独自経営の個人薬局

譲受企業にノウハウをもたらす、独自経営の個人薬局
  • 譲渡企業有限会社大泉薬局
    設立年月日
    1954年
    事業内容
    処方箋調剤、OTC医薬品・健康食品等の販売
  • 譲受企業株式会社エスシーグループ
    設立年月日
    1992年
    事業内容
    首都圏を中心に調剤薬局を展開
    URL
    https://scgroup.jp/

東京都練馬区の有限会社大泉薬局は、西武池袋線「大泉学園」駅前にある歴史の長い薬局です。3世代にわたって通われる患者様がいらっしゃるなど、地域に根ざした薬局として愛されてきました。

同社の杉山貴典社長は「地域に愛される薬局を次世代に残したい」との想いからM&Aの検討を開始し、最終的に株式会社エスシーグループへ株式を譲渡しました。しかし、その過程には独自の経営方針ゆえの悩みや苦労もあったといいます。譲渡成立から約2年、杉山社長と譲受企業の株式会社エスシーグループ皿澤康孝会長にお話を伺いました。

調剤報酬改定に翻弄されず、地域で薬局を続けるために

まずは、大泉薬局のこれまでの歩みや事業の特徴を教えてください。

杉山氏:当社は1954年に創業して創業家の方に代々受け継がれてきましたが、2010年に創業者の孫で当時の経営の要だった方がお亡くなりになりました。そこで、その方と以前から知り合いであった私と、調剤薬局チェーンを経営しながら当社の経営に関わっていた者との2名で大泉薬局を引き継ぐことになりました。その後、共同経営者が2014年に調剤薬局チェーンを譲渡してリタイアしたのを機に、経営者は私だけになりました。

当社は処方箋なしで買うことができるOTC医薬品や健康食品などの調剤以外が取扱商品の約20%を占めており、患者様にトータルなご提案をできることが強みです。例えばご高齢の方で体力低下から病気を患っている場合は、体力のベースを高めるサプリメントをご提案することもあります。

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これまで経営ではどんなことを心がけてこられたのでしょうか?

杉山氏:「目の前の患者様のお役に立っていれば、結果としてやっていける」という手応えがあり、とにかく患者様に尽くすことを心がけてきました。当社は大泉学園周辺では最も古い薬局で、今ではご家族3世代にわたってご利用いただいている患者様もいらっしゃいます。

なぜM&Aの検討を始められたのでしょうか?

杉山氏:2年に一度の調剤報酬改定が経営に与えるインパクトが非常に大きいためです。特に個人経営の薬局は改定のたびにどんな打撃を受けるか分からない不安が常につきまといますので、経営者が私一人になった翌年からM&Aを考え始めました。地域の患者様のために薬局を存続させたい、そのために当社にもM&Aという選択肢があるのかぜひ知りたいと思っていたのです。fundbookからご連絡をいただいたのはちょうどその頃ですね。

アドバイザー:2017年3月のことです。当時はM&A仲介事業を立ち上げたばかりで、その第一号案件としてご相談を受けさせていただきました。

M&Aを検討するうえで何か不安はありましたか?

杉山氏:OTC医薬品等の割合が高く一般的な調剤薬局とは少し異なるため、譲受先が見つからないのではないかと不安でした。

特に、当社はテレビCMでは宣伝されていないような商品を多く取り扱っています。テレビCMで見かける商品はドラッグストアで購入されやすいので、独自色の強い商品に力を入れてきたのですが、M&Aにおいてはそれがネックになるのではないかと危惧していました。

アドバイザー:一般的な調剤薬局ではOTC医薬品が5%程度なので、大泉薬局様の20%という数字は確かに特徴的と言えます。しかし、それをネガティブな要素ではなく、ポジティブな要素としてご提案できないかと考えました。実際、株式会社エスシーグループ様はその数字を大泉薬局様の強みとして前向きにとらえてくださいました。

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私たちと違う業態だからこそ、グループに迎えたかった

エスシーグループ様のこれまでの歩みや経営理念について教えてください。

皿澤氏:1992年に創業した当社は、調剤専門の薬局からスタートしました。『「安心と信頼」人にやさしい薬局を目指して』を理念に掲げて少しずつグループを拡大していき、2019年現在では首都圏を中心に約100店舗を展開しています。本社が板橋区にあるため板橋区・練馬区に20店舗以上が集中しています。

グループがここまで成長できたのは、規模拡大だけを追い求めず、一緒になる薬局の経営者やその店舗で働く従業員の皆さんの考え方や人柄を重視して、理念を共有して共に成長できるかどうかを見極めてきたからです。

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大泉薬局様をご紹介した際、OTC医薬品等の割合が高いことは気にならなかったのでしょうか?

皿澤氏:逆に、私どもにとって経験のない形の店舗であることを魅力に感じました。当グループ内に大泉薬局ほどOTC医薬品等を本格的に扱っている店舗はありません。M&Aで大泉薬局のノウハウをグループの他の薬局の運営にも活用できるのではないかと考えました。

アドバイザー:また、大泉薬局様のある練馬区はエスシーグループ様が強いエリアであり、近隣にグループの店舗が複数あることで経営上のメリットも期待できます。

杉山氏:店舗に在庫がない薬の処方箋を持参される方も少なくないので、ない薬をどのように入手するか、逆に過剰在庫によるリスクを抱えないためにはどうすればいいかという点は、常に調剤薬局の悩みです。近隣に同じグループの店舗があれば融通がきいて心強いです。

アドバイザー:杉山社長のお人柄や仕事に対する姿勢が皿澤会長のお人柄と非常に相性が良いと感覚的に分かったこともあり、マッチングをご提案しました。

皿澤氏:私どもはグループの薬局に画一的なやり方を押し付けるのではなく、100店舗あれば100通りのやり方があると考えています。大泉薬局は、地域性やお客様の特性に合わせたやり方でこれまで立派に経営してこられましたから、ぜひグループに入っていただきたいと感じました。

実際に面談でお会いされた時はどのような印象を持たれましたか?

杉山氏:経営理念に「人にやさしい薬局」という言葉がある通り、患者様だけでなく当社の従業員もしっかりと守っていただける安心感がありました。

皿澤氏:事前にアドバイザーの方に伺っていた話と何ら違和感なく、非常に人柄の良い優しそうな方だという印象を受けました。M&A後の経営に関することでは、ご自身が薬剤師でいらっしゃるので、グループ入り後も引き続き店舗をお任せしたい旨をお伝えし、快くお引き受けいただきました。

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成約までの流れはいかがでしたか?

杉山氏:あらかじめ伺っていた通常の流れよりも、さらにスムーズに進んだ印象でした。これまで経験したことがないM&Aの手続きに不安を感じていましたが、経営データを開示する用意は整えていましたし、最後までアドバイザーの方が親身に対応してくださいました。慣れないことではありましたが、難しいことは特にありませんでした。

アドバイザー:スムーズな成約の背景には、大泉薬局様の財務諸表に疑問符がつくような箇所が一つもなかったことが挙げられます。経営者の私的な支出は一切ありませんし、在庫の管理も定期的に行われていて、帳簿上の数字と実際の数字がきちんと一致する状態であったことが大きいです。

今は、安心して地域の患者様と向き合える

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成約後、店舗運営の体制や業績などにはどのような変化がありましたか?

杉山氏:エスシーグループのスケールメリットにより、仕入れの大幅なコストダウンが実現できました。当社は、調剤薬局チェーンを営む共同経営者が抜けたことで仕入れ価格が上がり厳しかったのですが、その課題が解消されました。

店舗運営の体制は以前と変わりありません。実は私はM&A後に退くつもりでしたが、皿澤会長のご厚意で成約から2年ほど経った今も残らせていただいています。何かあったときにはグループと従業員の間に立ってフォローできるという点で、残って良かったと思います。また、小規模な薬局では苦労しがちな薬剤師の採用問題についても、グループ入りのメリットを感じています。

皿澤氏:グループ入りしていただくことによって、採用も含めた管理部門の経費や手間が縮小されることは大きなメリットです。大泉薬局のように経営者が薬剤師として現場で働かれているような薬局がグループ入りした場合はなおさらでしょう。反対に大泉薬局のOTC医薬品等の活用ノウハウは、今後他の薬局にも広げていければと考えています。

M&A成立から2年近く経ちますが、その後の両社の関係が良好であると聞いております。その秘訣は何でしょうか?

杉山氏:グループ入りする前は、エスシーグループのことがあまり分からない中でやっていくのが不安でしたが、皿澤会長はグループの決算書をはじめあらゆる情報をオープンにしてくださるので、安心して仕事ができています。

皿澤氏:私には「仕事を成し遂げるにはすべての人の力を借りなければならない」という考えがあります。どんなスーパーマンも一人では仕事ができません。それぞれの店舗で皆さんのお力を借りて、協力しながら築き上げていく方針を大切にしているので、グループ入りしていただいた経営者の方には情報をオープンにしています。

また、こうして現在も良い関係を続けていられるのは、M&Aの段階でしっかりと関係を構築できたというのが大きいようにも思います。その点では、譲渡側と譲受側どちらの立場にも偏らず両者の真ん中に立って話を進めてくださったアドバイザーさんに感謝しています。

アドバイザー:アドバイザーの立ち位置については様々な意見があると思いますが、私は中立であるべきだと考えています。双方がしっかりと納得したうえでM&Aを進めなければ、必ず後悔が残ります。どちらにも偏らず、客観的に見て納得できる条件になることを大切にし、長い目で見て「この相手で良かった」と幸せになっていただける仲介を心がけてきました。

譲受企業にノウハウをもたらす、独自経営の個人薬局

譲受企業にノウハウをもたらす、独自経営の個人薬局

M&Aは患者様のための選択肢

有限会社大泉薬局
代表取締役社長 杉山 貴典 氏

国の方針次第で調剤薬局の経営がガラリと変わる時代が間近に来ています。特に個人経営の薬局は苦境に立たされ、生き残るための競争は今後さらに激しくなっていくでしょう。このような時代ですから、経営者として利益を追求することはもちろん大切です。しかし、それは会社をただ存続させるためではなく「地域の患者様のため」であるべきだと私は考えています。

M&Aによってエスシーグループの一員となり、日々患者様のことだけを考えて仕事に取り組めるようになりました。患者様に選んでいただける、理想的な薬局を実現するための選択肢。M&Aがその一つになることを、もっと多くの経営者に知っていただければいいなと思います。

譲受企業にノウハウをもたらす、独自経営の個人薬局

患者様や従業員の幸せを考える経営者とともに

株式会社エスシーグループ
代表取締役会長 皿澤 康孝 氏

長年にわたって患者様に愛されてきた薬局が閉店してしまうのは、地域医療における大きな損失です。手を取り合うことで、その道を避けることができる。これまでと変わらず患者様のお役に立つことができる。そう考えて当社は志をともにする方々と一緒に歩んでまいりました。

ただ、譲渡を検討される経営者にはご自身の利益だけを考えている方も少なくありませんし、そのような方と同じ未来を描くのはやはり難しい。杉山社長のように、地域の患者様、従業員の幸せを考えられる方をご紹介いただけて本当に良かったと思っています。それぞれの強みを生かし、グループ全体を成長させていけたらいいですね。

譲受企業にノウハウをもたらす、独自経営の個人薬局

両社の将来にとって意義のあるM&Aを

(担当アドバイザーのコメント)

大泉薬局の杉山社長は、長年地元の方々に愛されてきた薬局を将来まで残したいという想いと、単独で経営していくことの先行き不安から、M&Aをご検討されていました。M&A仲介会社は数多くありますが、私のご提案を通じて、当時設立されたばかりでまだ実績のなかったfundbookにお任せいただけたこと、今でも有り難く感じています。

杉山社長にエスシーグループ様をご紹介したのは、まず杉山社長の真面目で誠実なお人柄が、皿澤会長のお人柄や経営理念とマッチすると思ったからです。また、都内の板橋区・練馬区に20店舗以上を展開するエスシーグループ様のエリア戦略において、大泉薬局様と手を組むメリットは大きく、大泉薬局様もグループ入りすることでスケールメリットを得ることができる。必ず双方にとって前向きなM&Aになると確信していました。

大泉薬局様は、強固な財務基盤を有する調剤薬局グループの一員となったことで、経営が安定し、これまで以上に患者様に向き合うことができるようになりました。両社がそれぞれの強みやノウハウを活かしながら、将来にわたって地域医療に貢献されていくことを期待しております。

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