事業承継 M&A

中小企業のオーナーなどで、自分の会社を長年営んでいた方のその多くが現在直面しているのが「事業承継」に関わる問題です。自分の子供が会社に後継ぎとしてすでに働いてくれている、といった場合には会社を任せることができます。しかし、子供が独立して仕事をしているような場合には、その会社を任せる後継ぎが居ないという問題が発生してしまいます。昨今、そのような後継者問題が多くの会社で深刻化しているのです。

後継者問題に対しては、M&Aが解決策の一つになります。しかし、M&Aというと大きい会社同士の話だと思っている方が多いことも実情で、自分には関係のないことだと頭から考えてしまっている方もおられます。そこで本記事では、事業承継問題の背景と、その解決策としてのM&Aについてお伝えします。

▷関連記事:M&Aとは?メリットや手法、流れなど成功するための全知識を解説

事業承継が必要とされている背景

昨今、ニュースなどで事業承継というトピックがなぜ注目されているのか、まずはその背景を見てみましょう。いわゆる「団塊の世代」にあたる人たちが経営している会社において、多くの経営者が引退の時期を迎えています。しかし、後継者問題を抱える会社は珍しいものではなく、帝国データバンクによる『2017年後継者問題に関する企業の実態調査』によると、「後継者不在」だと回答した会社は、約33万社の調査対象の内、3社中2社にあたる22万社を超えるのです。

将来的な問題を認識しながらも計画的に対策を行ってこなかった会社では、後継者を見つけること自体が容易ではありません。また仮に見つかったとしても、育成が十分でないと経営者のノウハウや人脈、会社組織の掌握などが上手く引き継げない事態にもなりかねません。

後継者問題を解決できずに会社が廃業となれば、その会社で働いている人の雇用維持ができなくなります。また全ての取引が停止となるため、これまでお世話になってきた取引先にも大きな影響を及ぼします。団塊の世代の引退は今後5年程度で急速に進むと考えられており、事業承継をすみやかに行うことは国家政策にもなっています。後述する補助金や税制優遇といった制度にもつながっているため、事業承継はどのような会社でも真剣に考えておくべきものとなります。

▷関連記事:中小企業における後継者問題の現状

3つの主な事業承継先

次に、事業承継を行う場合には、どのような方法が検討できるのかを見てみましょう。事業の承継先として、主に考えられるのが次の3つになります。

親族への承継

一つ目に、親族が事業を受け継ぐことが考えられます。子供への承継が代表例としてあり、日本では昔から、慣例として子供が親の事業を継ぐということが行われてきました。しかし職業の選択肢の広がりなどを受け、親族への承継は減少傾向です。また、親族承継では相続税や贈与税など、会社の評価額によって多額の税金を納める場合があります。現在見直しがされている個人保証問題なども含めて、親族にはそのような負担をかけたくない、という経営者もいます。

実際に親族が事業承継で会社を受け継ぐような場合には、受け継ぐ予定の親族が会社に入ってオーナーや従業員と共に行動して、会社経営のノウハウも含めた事業承継をしていく必要があります。これには通常、念入りな準備と長い期間が必要になります。また、取引先に対しても、交代後も取引関係を継続できるように信用を得ておく必要があります。もちろん、社内的にも代表者として指揮していけるような状態を作り出さなければ、事業承継はうまくいきません。

▷関連記事:減少する親族承継、多様化する事業承継

従業員への承継

二つ目に、親族に会社を継いでくれるような人がいない場合には、従業員に事業承継するという方法が考えられます。長く事業をともにしてきた従業員への承継であれば、取引先や従業員の理解を得やすいという点では親族に事業承継するよりも準備もスムーズにいく可能性もあります。

一方で、従業員へ承継をするには経営者が保有している株式を譲渡することになるため、株式を買い取れるだけの大きな資金が必要となります。しかし、従業員が十分な資金を持っていることは多くはありません。資金以外にも、会社や経営者の保証や担保も引き継ぐことが多いため、引き継ぐ従業員には大きな決断が必要になります。

第三者への承継(M&A)

三つ目に、M&Aにより第三者へ会社を承継するという方法が検討できます。M&Aとは会社や事業の一部または全部を譲渡・譲受けしたり、複数の会社が1つの会社になったりすることを指します。上述したとおり、M&Aというと大きな会社の合併・分割などといったイメージが強く、中小企業の事業承継に利用するイメージを持っていない方も多いかもしれません。ところが、実際には多くの中小企業の事業承継において活用されており、後述するような補助金や税制優遇もあります。

自身の引退後の事業継続を考えた際に、他の承継先の選択が難しい場合には、第三者への承継は選択肢の一つとして検討しておくべき手段です。

▷関連記事:中小企業を廃業から救う「事業承継」にM&Aを使うメリット

事業承継がうまくいかない場合には廃業となることも

事業承継がうまくいかず、後継者が見つからない場合には、廃業という選択をすることになります。

廃業となる場合には、M&Aで譲渡を行う場合よりも、資産としての価値を大きく損なうというデメリットもあります。資産価値が低下した結果、経営者の個人保証が解消できずに、会社を清算した後にも負債が残ってしまうかもしれません。また何よりも、自身と共にこれまで会社を支えてきた従業員の雇用問題などにも直面することになってしまいます。

▷関連記事:事業承継失敗により生じる問題と解決策
 
事業承継 M&A

中小企業が事業承継を進めるためのポイント

続いて、中小企業が事業承継を進める場合、どのような事を知っておくと良いのでしょうか。事業承継を進めるためのポイントをご紹介します。

事業承継を支援する公的な制度

前述したように、後継者問題は国全体で解決すべき課題となっており、そのために必要となる費用については、公的な補助金が複数存在します。

代表的なものとしては、中小企業庁が実施している事業承継補助金があり、要件を満たせば最大で数百万円もの補助金を受けられるものです。地域経済に貢献している会社であり、事業承継をきっかけに新たな取り組みをするような場合に補助金を受けることができます。

事業承継のための税金の特例

また、事業承継のために必要な行為について、税金で特例を設けているような場合があります。いわゆる「事業承継税制」と呼ばれるもので、国による認定をうけたものについては、贈与税や相続税といった、事業承継時に発生する税金の負担軽減を行うという内容です。

例えば、税金負担を軽減するために2028年までの10年間の時限措置で、納税猶予の割合が80%から100%に拡大されています。

▷関連記事:事業承継にはどれくらいの費用がかかる?

M&Aで事業承継をする場合はマッチングも重要

M&Aを検討する際には、自社にあった譲受企業を探す事は非常に重要で、難しいポイントの一つです。どのような経営方針を掲げているのか、従業員の雇用は継続されるのか、どのようなシナジーが見込めるかといった様々な点を考慮して、事業を譲り渡す相手を決めるようにしましょう。十分に検討するためには1~2社の候補では難しいので、M&Aアドバイザーに相談し、複数の候補を得ることも有効です。

また相手先探しのみでなく、実際にM&Aを進めるにあたっては法務・税務・会計などの高い専門知識が必要となるため、少しでも不安な点がある場合には、早期にM&Aアドバイザーに相談することは良計といえるでしょう。

▷関連記事:アドバイザリー契約とは?契約書で規定される内容や報酬体系も解説

まとめ

本記事では、事業承継をとりまく問題と、事業承継の方法やポイントといったものについてお伝えしました。特にM&Aは後継者がいない会社において、事業承継の手段として期待できるものです。

また先述の通り、M&Aでは自社に適した譲受企業といかにマッチングするかが重要です。具体的に検討をされる際には、M&Aアドバイザーの助言を受けながら、数多くの登録企業への打診が行える「M&Aプラットフォーム」への登録も検討してみましょう。