日本国内の中小企業の数は、企業全体の99%以上を占めています(2016年、独立行政法人中小企業基盤整備機構調べ)。日本の産業や経済は、多くの中小企業によって支えられている部分が大きいといえるでしょう。一方で、中小企業の多くが後継者問題に悩まされているという現状もあります。周りに後継者がいない、見つからないという理由から廃業を検討している中小企業のオーナーも少なくありません。
そこで、後継者問題を解決する方法のひとつとして、M&Aが注目されています。

後継者不在の中小企業は廃業するしかない?


※休廃業・解散・倒産件数の年次推移 (東京商工リサーチ調べ)

先述の通り、後継者不在に悩んでいる中小企業が増えています。いったいなぜこのようなことが起こっているのか、その原因を探ってみましょう。

引退時期にある団塊世代の経営者

1947年から1949年に生まれた「団塊の世代」は、戦後の日本の経済成長と発展に大いに貢献してきた世代です。しかし、現在では、団塊の世代は70歳を超え、現役を退く人も増えています。団塊の世代の人の中には、中小企業の経営者として第一線で活躍してきた人も少なくありません。
実際に、中小企業の経営者の年齢分布のボリュームゾーンは、1995年には47歳でしたが、2015年には66歳と、団塊の世代の年齢と一致しています(中小企業庁「経営者のための事業承継マニュアル」2017年)。

人生100年時代といわれ、70歳までの就業機会の確保が政府内でも検討されている昨今とはいえ、すでに70歳を超えている団塊の世代の経営者が引退後に、事業をどのように継続していくのかは、喫緊の課題といえるでしょう。

後継者問題と廃業の危機

2017年に中小企業庁が作成した『経営者の事業承継マニュアル』によると、4,000以上の中小企業経営者に対して事業承継に関するインターネット調査を行った結果、60歳以上の法人経営者の5割が廃業を考えているという結果になりました。さらに、そのうちの3割近い経営者は、廃業を考えている理由について、「子供に継ぐ意思がない」「子供がいない」「適当な後継者が見つからない」といった「後継者問題」を挙げています(2016年、日本政策金融公庫総合研究所調べ)。

一方、事業に将来性がないと答えた経営者は、27.9%でした。つまり、7割以上の経営者が、事業そのものには問題がないにもかかわらず、廃業を予定しているということになります。

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廃業の危機を迎えた経営者の選択肢

廃業を検討している経営者の中には、元々自分の代だけで廃業しようと思っていたと答える人も38.2%存在しています。そもそも事業を継続させるつもりがないわけですから、このようなケースでは、予定どおり廃業という道を選ぶ経営者が多いでしょう。とはいえ、この場合も、取引先や従業員に対して迷惑がかかる、廃業コストがかかるといった問題への対処法は考えておく必要があります。

一方、後継者問題によって廃業を考えている場合は、次の3つの選択肢の中に対処法がないかどうか、今一度検討する必要があるでしょう。

親族への承継

いわゆる「家業を継いでもらう」方法で、子供や甥、姪などの親族に事業を譲ります。昔から広く行われていることですが、個人の意思が尊重され、職業の選択肢が多い昨今では、「家を継ぐ」という考え方はあまり一般的ではなくなってきています。そのため、以前は当たり前だった親から子への事業承継は、当たり前のことではなくなりつつあります。

子供や親族がすでに他の業界や企業に勤めていたり、責任のある仕事に就いていたりして事業を継ぐことができないというケースもあるでしょう。また、親自身が子供に対して事業を任せられないと考えていたり、安定性などを検討したりした結果、事業を継がせることを希望しないケースもあります。

社員(EBO)・役員(MBO)への承継

企業に勤めている従業員や経営陣に経営権を譲渡する方法です。事業の内容を熟知した経験豊富な従業員に事業を任せられるというメリットがある半面、譲渡する社員以外の社員へのフォローが大切になります。さらに、従業員に事業承継をする場合、該当の従業員が株式を一括で買い取るだけの資金力が必要となるため、あまり現実的ではありません。事業承継後は、企業が融資を受ける際の保証人になったり、個人の財産を担保として設定したりする可能性も出てくるため、事業を継ぐ覚悟の有無も重要になるでしょう。

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第三者への承継(M&A)

M&A(合併と買収)は、第三者に事業や株式を譲渡したり、会社を1つに取りまとめたりする方法です。資金力のある企業に株式や事業を買い取ってもらうことで、経営者は創業者利益を確保した上で引退することができます。しかし、事業自体は別の経営者が継続していくことになるため、従業員や取引先など、周囲への影響も少ないという数多くのメリットがあります。一方、社内や親族に事業を譲るわけではないことから、事業承継でM&Aを行う際は、譲受企業が信頼できる相手かどうかを見極めた上で、条件面のすり合わせを十分に行わなければいけません。

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M&Aの支援制度

中小企業が後継者難から廃業することは、国や地域の経済が衰退することにもつながります。そのため、国では支援策としてさまざまな施策を講じています。

例えば、国の事業である「事業引継ぎ支援センター」では、中小企業や小規模事業主へのM&A支援が行われています。各地に設置されたセンターで、M&Aに関する相談をしたり、サポートを受けたりすることが可能です。また、トラブルの相談などにものってもらうこともできます。実際にM&Aが可能であると見込まれる場合は、提携外部機関や専門家への紹介が受けられます。また、税制改正によって、相続税や贈与税の納税を猶予する期間限定の制度も施行し、中小企業が事業承継をしやすいような取組みをしています。

こうした制度を利用しながら、M&Aを成功させるための工夫が必要です。そのためには、まずM&Aのメリットとデメリットについて、よく知っておくと良いでしょう。

M&Aのメリット

廃業よりもM&Aを選ぶことのメリットには、創業者利益と事業継続に伴う周囲への影響の少なさなどが挙げられます。どのようなことなのか、具体的にご説明しましょう。

会社清算をした場合に比べて獲得できる創業者利益が大きい

会社を清算した場合、在庫や企業の保有している土地・建物などは「清算価格」として評価されることになり、評価額が低くなってしまいます。そのため、負債の清算ができず、借入金が残ってしまうリスクがあります。また、従業員に対しては、退職金を支払う必要もあるでしょう。

一方、M&Aを利用した場合、多くのケースで負債も含めて譲受企業に譲渡することになります。この場合、個人保証なども外すことが可能であるため、たいていの場合、引退後に負債が残る可能性は低いです。さらに、資産の評価額も時価相当となり、買取価格には営業権も加味されるため、まとまった金額を受け取ることが期待できます。なお、株式の譲渡益についての課税額(譲渡所得課税)は20.315%(所得税+復興特別所得税15.315%、住民税5%:2019年1月現在)で、会社清算をした場合の配当課税(最高55%)に比べても低く抑えられます。

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事業を継続できる

M&Aを利用することで、事業そのものを存続させることができます。そのため、これまでに培ってきた経験やスキルを途絶えさせることなく、後世に残すことができるでしょう。取引先に迷惑がかかることもありませんし、従業員についても雇用継続をM&Aの条件にすることが一般的で、雇用を維持したまま経営者は退任することができます。また、従業員に対して退職金を支払う必要もなくなるため、その分の支出も不要です。

M&Aのデメリット

M&Aは、うまく利用することができればメリットが大きい半面、デメリットもあります。どのような注意点があるか把握し、よく検討しておくといいでしょう。

適切な譲受企業とのマッチングが必須

M&Aを行うためには、当然のことながら、事業を継いでくれる譲受企業を探す必要があります。自社の事業を適切に引き継いでくれる企業とマッチングすることができるかどうかは、M&A成功のカギを握ります。

法律や税金などの専門知識が必要

法律や税金などについて専門的な知識がなければ、M&Aを適切に進めていくことはできません。そのため、M&Aに詳しい専門家に仲介してもらった上で、M&Aを進めることが一般的です。

少なくとも数ヶ月〜1年間ほどの時間がかかる

M&Aを行うためには、譲受企業の候補を探したり、具体的な選定を行ったり、企業の現状をまとめたり、条件交渉を行ったりと、実際の譲渡手続きに至るまでに多くの準備が必要になります。そのため、思い立ってすぐにM&Aを行うというわけにはいきません。ある程度の時間的余裕を持って取り組む必要があります。

M&Aを成功させるには

M&Aには、適切な譲受企業の選定と有利な条件で話を進めるための交渉が必須です。そのため、専門家に相談せずに自社のみでM&Aを進めるというのは現実的ではありません。従業員にとっても経営者にとってもメリットの大きい形でM&Aを行うためには、信頼できるパートナーと組むことが大切です。

M&Aの仲介を行っている企業は数多くあります。これまでの実績や紹介可能な企業数、実際の担当者との相性などを考え合わせた上で選定を行いましょう。適切なパートナーを見つけるためにも、選択肢のひとつとしてM&Aを検討し、早い段階から動き始めるようにしてください。

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